アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Friday 19 November 2010

若者よ、海外経験を。


「アメリカ赴任が希望」と入社時に申告したのは、これからの日本は世界を相手にビジネスをする時代という漠然とした想いがあったからだ。入社2年貿易実務の仕事もようやく少し分かりかけていた頃、突然希望がかなった。会社が米国市場立ち上げに本腰を入れることになったからだろう。現地からは急いで来いとのことだったが、着いてみればそれほど急いでいる風にない。取りあえずと言われた仕事は当時の通信手段であった“テレックス”のオペレーター。だがアメリカでビジネスや英語を学び、そのうえ給料をもらえるなんて夢のような話だ。
テレックスの交信に時間制限はない。電話は高額なのでよほどでないと使わない。最終原稿が手元に届くのは大抵就業時間後。日本語の原稿をローマ字で打ち紙テープに記録する。あとは本社と電話線でつなぎそのテープを一気に流す。ところが本社とつながらない。またやられた!5番街にあるアメリカ本社と日本本社がすでに交信状態だ。余分なラインはないので、早い者勝ち。ようやくラインが空いてこちらの番となるのが真夜中。しかしラインがつながればしめたもの。テープを流し終わったら後はライブの交信が始まる。「相撲は誰が優勝?」タイプをしながらの会話だから時間もかかる。金もかかるが、これは会社には内緒だ。終わる頃は時計の針は深夜をずっと回っている。
ある日出社するとアメリカ人が聞きなれない単語を使っている。例のFから始まる4文字だ。「ねえ、そのファ・・とかいうのはどういう意味?」一瞬オフィスの空気が凍りつく。全く日本人赴任者は困ったものだ、とアメリカ人の視線。へー、アメリカという国ではこんな言葉を普段の会話で使うのかと変に感心したが、お前は使うなと釘を刺された。
その後長い海外生活をする人生になったが相変わらず外国は未知の世界、驚きに溢れている。今日本からの海外留学や赴任の希望者が減っているそうだ。外需に頼らない日本を、という主張もある。しかし、日本は世界を相手に生きる国だ。対等に他国と渡り合い汗と知恵で世界に貢献する。そんな国にするために、そして自分のために若者には海外経験をしてもらいたい。若かった頃の小さな思い出も今では自分の大切なアセットである。