アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Monday, 12 September 2011

交渉の知恵

私の海外勤務が始まったのは半世紀ほど前ですから、その頃の海外支社は日本人が主体で動かしていた時代です。会社も週末も日本人がかたまって行動する集団生活で、これでは海外にいる意味がないと、この群れからできるだけ離れることにしました。同時に会社も現地化をして上司が現地人になりました。仕事が終わって上司と飲みに行くこともなくなりましたが彼等のマネジメントや考え方を学ぶ機会もあって、現地人上司は良い経験になりました。

彼等はある共通の悩みを抱えていたようです。私はメーカーで働きましたので商品が命です。日本人の設計者が昼夜懸命に働いて作った商品に日本側は自信満々です。ところが中には海外のお客様にはあまりピンとこない製品もあります。そんな時にはよく、日本側と“他の地域では売れたのに何故欧州では売れないのか”といった議論になります。この議論は英語ですので、意思の疎通がうまく行かないケースもあります。私の上司の英国人はダブルネガティブが話によくあらわれ、聞いている日本人は彼が賛成なのか、反対なのかも分からない。ご本人はその辺は理解して出来るだけ日本人でも理解しやすいような簡単な語彙や表現を使う努力をしたようです。その結果、彼は自分の奥さんから言葉が貧しくなって嘆かれたと言っていました。

しかし彼の悩みは言葉ではなく、日本側が複雑な欧州市場を理解していないことです。彼曰く、欧州人は多国間で生じる数々の問題を悲惨な戦争までして解決方法を学んできた長い歴史があるのに比べ日本人は交渉ごとに知恵が足りないと。このギャップを埋めるために上司と毎日数時間(英語の勉強を兼ねながら)過ごした日々は英国人と欧州を理解するうえで無駄ではなかったと今では思っています。 (鶴見)