アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Thursday 25 February 2010

親会社と子会社

今回は日本の親会社と海外の子会社の間で起こり得る問題について述べてみたいと思います。私は若い頃アメリカの子会社に赴任になりました。色々な仕事を経験しましたが、その中の一つにProcurementがあります。米国で販売する商品の買い付けをする仕事です。発注先は日本の親元の事業部で当時会社では新規に開発した大型の戦略商品がありました。この商品は3点一組のようないわばシステム商品で、各商品は単品でも売りますが、3点が同時に出荷されるのが成功の鍵でした。ところがこれが技術部や製造部にはかなりの負担のために同時出荷が困難な状況に陥りました。私は何としてでもこの商品の成功の為にと日本側をプッシュしたものです。

ところがこれを日本側の上役の方が見て、名指してお叱りを受けました。理想を言うな、技術/製造陣の苦労を考えろ、という訳です。勿論経験の乏しい私でも日本側の苦労は分かります。しかし、この大事な商品の成功の為には簡単に引き下がる訳にはゆきません。結局3点は出荷時期がずれましたが、何とかお客様のご要望に応えることが出来ました。

さて、ここで私の疑問は、この経緯が日本の一輸出企業と海外の第三者の会社であればどうだったかということです。場合によっては出荷遅れによる損害賠償や予定利益の損失クレームに発展したかも知れません。海外販売子会社の一担当者が本社事業部の苦労も分からずに無理を言うな、という理屈は分かります。しかし、これが日本の親会社、海外の子会社の甘えの構造に発展し最終的には会社の体質を弱くしないと誰が言えるでしょうか?身内でうまく調整をとることで波風を立てない、要らない社内不協和音を避ける風潮。第三者との取引ならオーダーをキャンセルされる、賠償金を取られるなどの危機意識は本社/海外子会社の親子関係の中では希薄になりがちです。

もちろん、海外子会社の強みもあります。しかし現実としては親元が海外に派遣した赴任者や現地従業員から謙虚に話しを聞くことは簡単ではありません。一方で海外赴任者も帰任後のことを心配したり、昔の上下関係を引きずるような仕事はしていないでしょうか?今回のトヨタの例を挙げるまでものなく、海外、国内を問わず市場で起こったことを対岸の火事とせず、本社と子会社が真摯に向き合うことができないと、そのツケは莫大なものとして自らに降りかかる結果となるのは明白です。皆様のご意見をお聞かせください。
(鶴見)

Wednesday 24 February 2010

ユティリティー請求書の悪夢

今日の話はビジネスだけでなく、家庭のガス・電気でも当てはまりますので覚えておくと請求書のストレス軽減に役立ちます。

今までの経験からガスや電気請求書(utility bill)には結構間違いが多いのに驚きます。いろいろ理由があるのですが、問題となる筆頭は電気やガスのメーターのEstimate Readと呼ばれるものです。請求書発行時にメーターを実際に読んでおらず、過去の消費量に基づいて計算で出てきた数値です。問題はこの数値がでたらめで過剰、あるいは過小請求となるケースです。Estimate Readが積み重なると、なぜかそのほかの間違いまでくっついてきて、どうしようもなくなるものです。通常エネルギー会社はMeter Reading Agencyという別会社にメーター読みを委託してますが、当然コストがかかります。したがって場合によっては何年もメーターを読んでいなかったということもあります。

というわけで唯一の解決法は面倒でも最低3ヶ月に1回は自分でメーターを読んでサプライヤーに報告することです。月の最終日が一番ベストでその日のうちにレポートすれば月初の請求書発行に間に合う言う理屈です。この国では特に言えることですが、サプライヤーに文句を言う前にまず自己防衛なんですね。メーターの読み方は以下のBritish Gasのリンクを参照してください。 (西川)


Saturday 20 February 2010

改革のチャンス

今回はあるローカルのトップマネジメントについての話です。Aさんはある事業部門のヘッドを勤め実績を残し昇進を重ねてついに販売会社全体のトップに昇りつめました。ところが、結果はうまく行かず2年も経たないうちに交代となってしまいました。さて今回はこのケースについて考えたいと思います。

Aさんの事業部門(仮にX事業部門とします)は売上、利益とも全体の中では主流ではありません。そして他の事業部門とはビジネスモデルにかなりの違いがありました。それは中央集権型の組織体制です。大きなポリシーは日本の本部で決定され指示され販売会社はそれを着実に実行します。一方他の事業部門ではポリシーの決定権はローカル、例えば欧州本部や国の販売会社にあります。社内ネゴに時間がかかりますが会社の設立時から長らく続いた社内ポリシーです。

この状況下でAさんは着任早々このポリシーの見直しを行いX事業部門で行われていたやり方を実行しようとしました。何かの折につけ、X事業部門ではああしていた、こうしていたと口癖のように言っていたようです。しかも彼はかなりのマイクロマネジメントで細かいことにも口を出していたようです。ある人は彼を皮肉交じりに「係長」と呼んでいたほどです。Aさんの交代の原因は、彼が昔の事業部門のビジネスモデルを押し付け、しかもマイクロマネジメントであったからでしょう。

しかし、もし彼が卓越したリーダーであれば会社は新しいビジネスモデルをその時に採用していたかも知れません。実際、社内の小さな事業部門が実行しているやり方が実は今の時代、次の時代に最もフィットしたやり方というケースはあります。逆に言えば、会社の本流出身の人は従来のモデルを踏襲する故、抜本的改革が遅れることもあります。Aさんの場合は不幸にもマイクロマネジメントで失格になりましたが、同時に会社は新しいビジネスモデルに変える良いチャンスを逃しことにもなりました。会社を変えるには会社の主流にいない人の方が実現できる場合があります。それはルールブレイクが出来るからです。但し本人にリーダーシップがあることが条件ですが。そして改革の機会を一度逃すと次のチャンスはすぐには訪れないことも肝に銘じるべきかも知れません。皆様のお考えをお聞かせください。
(鶴見)

Tuesday 16 February 2010

コスト削減: エネルギーコスト

今回はエネルギー(電気・ガス)のコストについて見てみましょう。

ご存知の通り英国は15年前からエネルギー市場を自由化しており、自由にガス、電気のサプライヤーを選ぶことができます。したがって上手な選択をすることでエネルギーコストがかなり削減できます。ただしリーテール価格はエネルギー市場の市況に左右されます。従いマーケットが高騰している時期に契約すると、どうしても高い価格にならざるをえません。08年の10月にエネルギー価格(ガス、電気ともに同じ傾向です)が近年のピークを迎えました。このときに長期契約(たとえば3年)されているケースは悲劇です。一度契約をしてしまうと、ビジネスを続けている限り期間中の解約はできません。残念ながら契約期間中、高い値段を払い続けなければなくなるわけです。現在であれば価格は大幅に下がってますので、大変な負担となります。このほかに契約期間、使用量なども価格に反映されます。また場合によってはビジネスユーザーであっても契約をしておらず、タリフレートが適応されているケースもあります。この場合は通常契約した方が有利です。

契約更新に関しては結構面倒な手続きがあって、現行サプライヤーの更新価格で自動継続契約してしまっているケースがかなりあります。有名な文句"Don't worry, you don't need to do anything ."です。価格更新時はコスト削減の一番のチャンスですので、もし何年も同じ会社と契約しているのであれば、一度コンサルタントに相談されることを勧めます。かなりの確率でコストは下がるものです。 (西川)

高木美帆選手のインタビュー

オリンピックがいよいよ開幕しました。オリンピックは参加することに意義があるとはいえ、誰でも勝ちたいのは当然です。日本選手も出発前のインタビューでは「メダルを取りたい」「成果を出したい」などとコメントしていました。その中で私が注目したのは中学3年生15歳の高木美帆選手です。彼女は「外国の選手と話をしたい」と答えました。すかさず「英語は大丈夫ですか?」と聞かれ「それはチョットまずいかも。。。」というインタビューでした。実際現地入りしてから、今大会の男子中距離で金メダル候補のシャニー・デービス選手(米国)と話す機会があったが、英会話がうまくゆかず「ヤングスケーターとかグッドラックぐらいしか分からなかった」そして「サンキューぐらいしか言えなくて。あーあ、という感じ」(日経)と報道されていました。

オリンピック初参加、最年少の高木選手にしてみればメダル云々よりはまず世界のトップ選手と話したい、そして彼らから何かを学びたいと思う気持はよく分かります。しかし私はこの高木選手の何気ない言葉が何故かとても頼もしく感じられました。今日本の若者の巣ごもり症候群が指摘されています。2008年度に 3カ月以上海外留学した高校生はピークの1992年度に比べて約3割減だそうです。企業で海外に赴任したい若者も年々減っていると聞きました。こんなことではオリンピックのメダルはおろかグローバル企業のメダルも取れません。国内で金を取っても世界の金は取れないでしょう。

以前米国に勤務していた頃、当時のソニーの盛田会長が現地に来られ日本人社員を前に「君たちは民間外交官と思って頑張って欲しい」と言われたことを覚えています。海外に赴任して現地でただ働くだけではなく言葉を理解し人を理解し国の代表と思って努力をする。アスリートでも企業の赴任者でもメダルをとることだけでなく同時に母国を代表して相互の理解や発展に尽くすということです。海外では多くの赴任者、移民の方、外交官が活躍されています。日本に対する評価を決めるのはまさにその人達次第です。高木さん、貴方の思いはきっと将来国際アスリートとして活躍する原点となります。赴任者の皆様も是非大きな志をもって海外で活躍されるよう心から応援しています。
(鶴見)

Thursday 11 February 2010

トヨタのリコール問題で想うこと

車の品質には絶対の信頼を持たれていたトヨタ車のリコール問題がショッキングなニュースとして報道されました。最新型で売上のトップにランクされしかも技術的にも最先端をゆくエコカーであったことが一層市場に動揺をもたらしました。しかもリコール決定の発表とトップの謝罪が後手に回ったことが何とも企業イメージを悪くしました。この理由は色々あるでしょうが、自分なりに日本企業に内在するある問題点を指摘したいと思います。

メーカーには設計部、製造部、品質部門、などがありこれ等の部門はそれぞれ独立しています。品質の問題が起こった時通常はそれが設計に原因があるのか、製造に問題があるのかまたは部品不良なのか等が明確に判断されます。品質部門は品質に問題があれば当然出荷を許さない権限を持っています。設計部や製造部がいかに苦労して作った製品でも検査部門が不合格と認定すれば出荷停止です。今回の場合は原因がコンピューターソフトの微妙な設定条件の問題で最終的には設計ミスと判断されましたが、品質部門は最後まで不良品と判定しなかったような印象を受けます。

さて一般的に日本企業の強みは所属を越えるチームワークと言われています。部門の壁を越えるチームワークでお互いに協力しながら問題を解決します。自分の仕事の責任範囲がクリアーに規定され、その枠内だけで働く欧米型とは違います。欧米で仕事をすると問題が起こった時に「これは自分の(部の)責任ではない。悪いのはあちらの部」というローカルの人の言い分に違和感を持たれた経験がある方も多いかと思います。確かにその人(部)の直接的な責任ではないかも知れませんが、両者が協力し合えば未然に防げた問題かもしれません。仕事の効率は別にしても日本企業では大まかなjob descriptionとチームワークのお陰で問題が未然に防がれるケースもあるように思います。

しかし他方でトヨタのケースのように、それが設計ミスかそうでないのか微妙な判定をめぐるトラブルが発生した時に責任の所在が明白になるのかが問題です。端的に言えば設計部と検査部門が“おんぶにだっこ”状態ではなかったのか?お互いに協力し合う仕事のやり方は一つ間違えると責任の所在が不明確になりアクションが遅れる可能性があるのではないか?日本企業の強みがひとつ間違えると弱みにもなるリスクがあるということです。日本型、欧米型どちらにしても完璧なシステムではありません。今回のトヨタのリコールと日本企業に内在する問題点に直接的な因果関係があるかは不明です。しかし、この機に今一度社内のシステムを点検してみませんか?皆様のお考えをお聞かせ下さい。
(鶴見)

Sunday 7 February 2010

赴任者を信用しますかーその2

前回は最初の100日を自己改革につなげる話しを書きましたが、私のある友人から上司のプレッシャーと部下の間に挟まれ立ち上げに苦労した経験談を聞きました。色々なケースがあるでしょうが、まずFirst 100 daysを意識することが大切と思います。

さて今回は「赴任者を信用しますかーその2」です。その出来ごとは私が北米勤務時代に起こりました。当時北米販売子会社のトップは業界でも有名なあるアメリカ人経営者でした。彼の下で毎月厳しいビジネスのレビューミーティングが持たれました。ある時私のグループの過剰在庫が問題となりました。販売会社の過剰在庫は大きく業績に影響します。その時のトップの発言に私は大変なショックを受けました。彼は「発注の担当者が工場出身者であることが問題だ」と言ったのです。

海外販売子会社で工場に発注する担当者が工場出身者であるケースは稀ではありません。トップの発言の意味は、工場出身者では工場の稼働率などを優先して発注が行われることがある。つまり海外販売会社の在庫状況や市場販売状況を最優先せずに発注がなされる可能性を問題としたものです。もしそうであれば、確かに問題でしょう。しかし日本からのプロの購買担当者ならそんな仕事はしません。工場側の事情を理解し、かつ販売会社の在庫や販売状況をふまえて発注するものです。少なくとも私はそう信じていました。

しかし、そこに日本の経営の落とし穴があるのかも知れません。製造と販売両者の利益を同時に満たそうとするばかりに思いきった発注減などのアクションをとるのが遅くなる場合はあり得ます。日本からの赴任者が一体どちらの利益を主体に考えるのかを今一度考える必要があるのではありませんか?現地のマネジメントから「私は赴任者を信用しません」と言われない為にも。
そして何よりも会社に大きな損失を生じさせない為にも。皆様のご意見をお聞かせください。
(鶴見)

Friday 5 February 2010

コミュニケーション能力

今日はいつもとちょっと違った話題です。

ちょっと仕事が落着いているこの時期にフィリピンのセブ島にホリデーにいってきました。ご存知の通りフィリピンは観光資源に恵まれ、世界中から多くの観光客をひきつけています。反対に500万ににも達するといわれるフィリピン人たちが海外で一生懸命働き、その送金が経済の重要な要素であることも良く知られています。また最近は海外からの直接投資として、アメリカ向けのコールセンタービジネスが非常に活発です。丁度、インドのイギリス向けコールセンターと同じ考え方です。

こういったビジネスの形態は地理的、経済的など様々な要因から成り立っていますが、私は特にフィリピンの人たちの優れたコミュニケーション能力が果たす役割が非常に強いと感じます。ご存知の通り英語はタガログ語と並んで公用語とされてますので何処でもほぼ間違いなく通じます。彼らの英語能力の高さは、それゆえにフィリピンの最も優れた資産の一つであるといっても言い過ぎではないでしょう。その上に彼らが持つ心からのホスピタリティーの精神によって、相手を理解しようとする態度がさらにコミュニケーション能力を高めています。

今回のホリデーは彼らからコミュニケーションの大切さを学んだことで、ちょっと得をした気分でした。 (西川)

Wednesday 3 February 2010

First 100 days

変革を期待されたオバマ政権や鳩山政権のFirst 100 daysの評価は予想以上に厳しいものでした。政権に着いた途端に諸問題の渦に巻き込まれました。同時に新政権のビジョンを作り、組織/人事を固め、予算も発表しました。この経験は国のトップに限らず会社や、一部門の責任者、ひょっとすると誰にでも当てはまることかも知れません。

さてそこで質問ですが、皆さんは最初の100日がどれほど重要とお考えですか?誰でも新しい仕事についた時は前任者からの引き継ぎや関係者との顔つなぎ、それにすぐに対応しなければならない諸問題に忙殺されるものです。私も過去何度も日米、日欧を往復しその度に新しいポジションに就きました。しかしその都度言わば転勤慣れをしてしまい一通りの引き継ぎ業務で終わってしまいました。仕事がそつなく継続されることが無意識に第一目標になっていたように思います。辛うじて最後の赴任の時のみFirst 100 daysを意識したようです。その仕事は欧州ビジネス全体の統括でした。当時、事業環境は今に劣らず厳しく会社のコスト構造も大きく変える必要がありました。加えて人事も大幅な刷新が必要でした。歴史がある会社ほど一層の変革が求められるのも事実のようです。100日の間に大きなチェンジを実行しました。チェンジをスタートしたということです。

今振り返ると何故あの時100日を効果的に使ったのでしょうか?答えはただ一つ。自分に危機意識があった為と思います。仕事の大きさやポジションも少しは影響があったかも知れません。しかしどんな仕事にも改革が必要です。問題は自らが危機意識を持ち変革する情熱があるか否かにあるような気がします。そして転勤や赴任が改革のチャンスであり、100日がそれを始める絶好の機会であるように思います。過去何度とチャンスを逸した自分の人生を振り返って考えてみました.皆さんはいかがでしょうか?蛇足ですが100日を過ぎてしまった方でも今日から100日の間で取り組んでみられたらいかがでしょうか?
(鶴見)