アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Friday 24 September 2010

産業を興す

唐突ですが、皆さんは“産業を興す”ことを考えたことはありますか?“産業”とは辞書によれば“生活に必要な物的財貨および用役を生産する活動、例えば製造業、通信・・”とあります。

今から40年ほど前のことです。赴任した米国では当時まさに家庭用ビデオの黎明期。カセットVTRを市場に導入しました。しかしハードがあってもソフトがなければ単なる箱です。ハリウッドの映画業界に足を運び“家庭で見る映画”の新市場幕開けを宣伝しました。しかしハリウッドのスタジオはこれが既存の市場である劇場(シアター)の利益を圧迫するリスクを恐れました。また海賊版による著作権の侵害も心配の種で簡単に映画のビデオ化を許可しません。映画を録画したカセットを大量にコピーする設備を全米内に数ヶ所設置しましたが、これでは設備が稼働しません。“鶏が先か卵が先か”の典型的なジレンマに陥りました。

しかしこの新しい産業は氷が少しつつ解けるように立ちあがり始めました。誰もが目先の小さなリスクより将来の大きなリターンを目指したのです。おりしも家庭用ビデオによるテレビ録画が映画の著作権を侵害するという映画会社の提訴に連邦裁判所はシロの裁定を下しました。こうして裾野の広いビデオ産業が幕開けしたのです。現在はデバイスも多様化し通信も発達したお陰であらゆる映像が何処でも見られるユビキタスな状況になりつつあります。このように新しい産業を興すにはハードメーカーだけでなく様々な分野で産業を支える関連企業の協力が必要です。それぞれがお互いに競い合うことで更なる市場開拓が加速し産業のすそ野も広がります。まさに共存共栄の原理です。

世の中は出来あがった市場でのシェアーを争うビジネスが主流です。しかし既存ビジネスのシェアー争いだけでは最後は価格競争の消耗戦となる可能性があります。今新しい市場創造こそが望まれるのですが、それには“産業を興す”技術と潜在需要の掘り起こし、そして関連企業の総合力が必要です。さあ、どんな新産業を興すか、テーマは大きいですが皆で知恵を出してみましょう。プロダクトやサービスが大きな産業に発展する夢を持つのも悪くありません。
(鶴見)

Friday 17 September 2010

社内ポリティックス

長年海外で働くと様々な人との出会いがあります。米国で某部門ヘッドであったA氏は相手が日本人であろうがお構いなく機関銃のような早口でしゃべります。長身ですこし背を丸め速足で歩き人懐っこい笑顔が印象的ですが、話はするどく相手に切り込みます。厳しい仕事ぶりでしたが部下からは100%信頼をされていました。彼はある時上司のトップとうまく行かず会社を去ってしまいました。何年か後、同じく米国でセールスのトップに地域で優秀な成績を収めたB氏が抜擢されました。しかし彼も数年後本社での面倒な社内ポリティックスに巻き込まれ結局地元に戻ってしまいました。

この二つのケースは共に特異な出来ごとではありません。しかし、あれだけ信頼の厚かった二人が何故職を離れたのでしょうか?業績が悪くビジネスに失敗したわけではありません。マネジメントとしてそれなりの実績も残してきました。あの二人の性格を思えば社内のゴタゴタが耐えられなかったのでしょうか?仕事は本来お客の為に仲間と汗をかき会社や社会に貢献することです。しかし、単純にモノやサービスを売るだけの仕事からマネジメントになれば仕事はそう単純ではありません。社内の交渉事に時間と労力を費やすことは無駄ではないか?社内ポリティックスも無駄だ、人生は短い、他にも仕事は在る、とA氏もB氏も考えたのかは分かりません。

一般的にマネジメントで仕事の範疇が広がると関係者は増え、改革を実行するとなると利害の対立も生じます。ポリティックスにも巻き込まれます。人事もたいへんです。誰しも仕事は楽しくやりたい。社内の説得よりお客の説得の方が楽かもしれません。しかしマネジメントになれば仕事は複雑化します。社内の無駄なポリティックスは無い方が良いに決まっていますがマネジメントになれば避けては通れません。実際、これまで面倒な社内折衝も含めて、楽しげに仕事をしてきたマネジメントを何人も見てきました。会社を去るのも、仕事を変えるのも一案です。そして社内ポリティックスをものともせず、複雑な仕事にチャレンジするのも選択肢です。最終的に自分の人生は自分で決めるしかありません。
(鶴見)