アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Thursday 23 December 2010

Season's Greeting


本年も残り少なくなってきました。皆様いかがお過ごしでしょうか?欧州の異様な寒波で交通機関が乱れ、足止めされてしまった方々も多いかと思います。

お蔭様で2010年も様々なクライアントとお仕事をさせていただくことができました。来年はアクロスアソシエイツもコンサルタント事業を拡大していこうと計画中です。何卒、2011年も宜しくお願い申し上げます。

それでは皆様にとって2011年も実り多い年でありますように。よい年末年始をお過ごしください。

I wish you a Happy Christmas and a Prosperous New Year! (西川)

Sunday 19 December 2010

小澤征爾さんが訪ねて来られました!

それは2002年、日韓合同のワールドカップで日本が第一戦のベルギーとの試合に2対2で引き分けた6月4日のことだったと記憶しています。翌日の出張を控えてベルリンのオフィスを出て、普段からいきつけの日本料理店「よしおか」に着いたのは9時をまわっていたでしょうか。お店には数名のお客がいました。いつものカウンター席に座るとマスターが私の後ろの少し離れている席を指さして「小澤征爾さんがみえていますよ」と教えてくれました。

見るとお一人で食事をされているのです。「よしおか」のマスターは大のクラシックファンで、そのこともあってかベルリンで音楽を勉強している人をそこではよく見かけましたが、あの小澤征爾さんがお一人で見えているのには驚きました。当時はウィーン国立歌劇場の音楽監督をされていたようです。お邪魔かと思いましたが、こんなチャンスはまたとありません。図々しく自己紹介をしてお話をしました。サッカーもお好きなようで日本の試合をビデオで観られないかを尋ねられました。丁度私のオフィスのあるソニーセンターには日本のフジテレビの放送センターも設置されており、ソニーにも観られる場所はありますので是非お時間があればお出でください、とその時は何気なしに言ってその場を離れました。

出張から戻るとソニーの部下から「小澤さんがみえて皆大慌てしました、何故連絡を入れてくれなかったのですか」とクレームを受けこちらもビックリ。まさかすぐにお出でになるとは思いませんでしたが、幸い急遽アレンジをして小澤さんにはご迷惑をお掛けしなかったと聞きホッと胸をなで下ろしました。部下には大謝り、日頃からコミュニケーションを大切に、などと言っている自分がこんなことではいけない、と大いに反省した次第です。世の中には自分に報告がないと腹を立てる上司が、さて自分は皆と情報を共有しているかと言えば、決してそうではないケースも多いようです。こんな場合は上司に「気づき」をリマインドすることも遠慮なくやるべきでしょう。上司は部下から教えられることも多いものです。
(鶴見)

Monday 13 December 2010

会社はなぜ衰退するのか

日本では創業100年を越える企業が20,000社以上あるといわれています。この変化の激しい時代に何が事業を継続させたのでしょうか?私が入社した当時のソニーは創業者の井深さん、盛田さんがトップの経営者でした。家電メーカーとして後発のソニーは他社にない技術とユニークな商品で市場を創造し成長しました。モノだけでなく様々な経営分野で創業者の理念が浸透しました。その後会社のトップが代わり創業者の理念は企業文化として引き継がれましたが、何事にも果敢に挑戦するベンチャー企業から安定性を重視した企業になったようにも見受けられます。

このように企業は創業時の不安定であるが、ダイナミックな動きをする時代を過ぎ企業として安定した成長を求めるようになると、時には活力に陰りがでたり場合によっては衰退に向かうケースもあります。もし創業者が今でも経営していたらどうかと想像してみますが答えは簡単ではありません。後世の人の能力が劣っている訳ではありません。では何が違うのでしょうか?それは会社に勤める多くの人が従来の仕事をただそつなくこなすようになるからではないでしょうか?仕事は時に殻をやぶり、変化させることが重要です。ルールも変える必要があります。人は仕事がうまく行かない時に他人や組織などまわりの環境のせいにする傾向があります。

確かに現状を打破するには大変なエネルギーが必要なのは事実です。しかし創業後長年に亘っても若さを失わずに活気のある会社も存在します。与えられた仕事だけを今まで通りやることでは会社は生きていかれません。日本のように内向きの社会で生きてきた会社はやがてグローバル化の波にのまれてしまいます。さて今日も新しい日が始ります。やらなければいけない仕事が山積しています。しかし、ここで立ち止まり、会社を変える仕事は何かを考えてみましょう。これが企業の誕生から衰退の変化に挑戦してみることに繋がることでしょう。
(鶴見)

Thursday 2 December 2010

技術立国日本

1960年代にソニーが開発したトランジスタを使った小型VTRに使われた技術が米国アンペックス社の持つ特許に抵触するということで訴訟問題に発展しました。その後問題は解決し家庭用ビデオが誕生、大きな産業となりました。現在日本の特許数はアメリカに次いで2位ですが最近はやや減少傾向にあり、中国や韓国が迫る勢いで伸びています。

以前社内である議論が起こりました。(A)会社は自社で開発する独自技術にあくまでこだわるべき、とする議論と(B)他社で開発する技術を積極的に導入すべき、とする議論です。この議論は単純にどちらと割り切ることは難しいのですが、どちらにしても結論は企業文化に大いに関係しているようです。ソニーはもともとResearch makes the differenceという言葉で企業PRをしたように、独自技術を売りにした会社です。従って他社技術を使ってビジネスを拡大したアップル社などと違い自社で技術を開発することに情熱を燃やす技術者が多いのです。しかし、これは一歩間違えると他社と大同小異の技術の開発に多くの時間とコストをかけるリスクもあります。この反省もあり、最近は他社の技術も積極的に取り入れているようです。

この傾向は日本企業全体にも言えるかも知れません。日本企業は昔から自社の技術や自社のやり方にこだわる傾向があり、これがグローバル競争に後れをとる原因とも言われています。差別化戦略が技術的に困難になってきた状況もあるでしょう。またソフト技術に弱いとも指摘されています。しかし短期的に他社技術に頼っても中長期的には優れた独自技術なしでは厳しいグローバル競争に勝てません。ソニーに限らず日本企業全体が厳しい競争の中で短期志向を強め、世の中をアッと言わせるほどの技術の開発や製品が出てこないとなると世界競争に勝てません。
リストラ、コスト削減、集中と選択などどこの企業も生き残りに大変な努力を払っていますが、価値ある技術は無駄や夢の中で生まれてくるようにも思います。全てをそぎ落とすことをしない経営を望みます。
(鶴見)

Friday 19 November 2010

若者よ、海外経験を。


「アメリカ赴任が希望」と入社時に申告したのは、これからの日本は世界を相手にビジネスをする時代という漠然とした想いがあったからだ。入社2年貿易実務の仕事もようやく少し分かりかけていた頃、突然希望がかなった。会社が米国市場立ち上げに本腰を入れることになったからだろう。現地からは急いで来いとのことだったが、着いてみればそれほど急いでいる風にない。取りあえずと言われた仕事は当時の通信手段であった“テレックス”のオペレーター。だがアメリカでビジネスや英語を学び、そのうえ給料をもらえるなんて夢のような話だ。
テレックスの交信に時間制限はない。電話は高額なのでよほどでないと使わない。最終原稿が手元に届くのは大抵就業時間後。日本語の原稿をローマ字で打ち紙テープに記録する。あとは本社と電話線でつなぎそのテープを一気に流す。ところが本社とつながらない。またやられた!5番街にあるアメリカ本社と日本本社がすでに交信状態だ。余分なラインはないので、早い者勝ち。ようやくラインが空いてこちらの番となるのが真夜中。しかしラインがつながればしめたもの。テープを流し終わったら後はライブの交信が始まる。「相撲は誰が優勝?」タイプをしながらの会話だから時間もかかる。金もかかるが、これは会社には内緒だ。終わる頃は時計の針は深夜をずっと回っている。
ある日出社するとアメリカ人が聞きなれない単語を使っている。例のFから始まる4文字だ。「ねえ、そのファ・・とかいうのはどういう意味?」一瞬オフィスの空気が凍りつく。全く日本人赴任者は困ったものだ、とアメリカ人の視線。へー、アメリカという国ではこんな言葉を普段の会話で使うのかと変に感心したが、お前は使うなと釘を刺された。
その後長い海外生活をする人生になったが相変わらず外国は未知の世界、驚きに溢れている。今日本からの海外留学や赴任の希望者が減っているそうだ。外需に頼らない日本を、という主張もある。しかし、日本は世界を相手に生きる国だ。対等に他国と渡り合い汗と知恵で世界に貢献する。そんな国にするために、そして自分のために若者には海外経験をしてもらいたい。若かった頃の小さな思い出も今では自分の大切なアセットである。

Friday 22 October 2010

多分、人生一度っきりのチャンス

最近、寒くて暗いヒースロー空港に始めて降り立った1990年10月のあの日のことが思い出されます。思えば機械部品メーカーの駐在員としてロンドン赴任となり、転職そして独立。その間、結婚までしちゃいましたから、考えるといろいろあった20年でした。 結果としてロンドンは今まで住んだどの街よりも長く生活したことになります。どうやら私にとってはロンドンこそが「地元」だと思えるようになりました。

というわけでわが「地元」で2012年に開催されるロンドンオリンピックは個人的にもとても楽しみにしています。何しろ自分が生きている間に、住んでいる街がオリンピックをホストするなんて、そう滅多にある事じゃないと思います。そこで私は今回、大会のボランティア(Games Makerと呼ばれる)に応募することにしました。どうやら既に10万人を超える人たちがオンラインでの登録を済ませているらしく、市民レベルでの盛り上がりが感じられます。国家の威信のみが感じられた、どこかの国のオリンピックとは成熟度合いがまるで違うと思いませんか?締め切りは10月27日(水)までですので興味のある方は是非応募してください。以下のリンクからオンライ登録可能です。(西川)

ロンドン2012公式サイト-ボランティア応募

Jude Law on being a Games Maker

Friday 24 September 2010

産業を興す

唐突ですが、皆さんは“産業を興す”ことを考えたことはありますか?“産業”とは辞書によれば“生活に必要な物的財貨および用役を生産する活動、例えば製造業、通信・・”とあります。

今から40年ほど前のことです。赴任した米国では当時まさに家庭用ビデオの黎明期。カセットVTRを市場に導入しました。しかしハードがあってもソフトがなければ単なる箱です。ハリウッドの映画業界に足を運び“家庭で見る映画”の新市場幕開けを宣伝しました。しかしハリウッドのスタジオはこれが既存の市場である劇場(シアター)の利益を圧迫するリスクを恐れました。また海賊版による著作権の侵害も心配の種で簡単に映画のビデオ化を許可しません。映画を録画したカセットを大量にコピーする設備を全米内に数ヶ所設置しましたが、これでは設備が稼働しません。“鶏が先か卵が先か”の典型的なジレンマに陥りました。

しかしこの新しい産業は氷が少しつつ解けるように立ちあがり始めました。誰もが目先の小さなリスクより将来の大きなリターンを目指したのです。おりしも家庭用ビデオによるテレビ録画が映画の著作権を侵害するという映画会社の提訴に連邦裁判所はシロの裁定を下しました。こうして裾野の広いビデオ産業が幕開けしたのです。現在はデバイスも多様化し通信も発達したお陰であらゆる映像が何処でも見られるユビキタスな状況になりつつあります。このように新しい産業を興すにはハードメーカーだけでなく様々な分野で産業を支える関連企業の協力が必要です。それぞれがお互いに競い合うことで更なる市場開拓が加速し産業のすそ野も広がります。まさに共存共栄の原理です。

世の中は出来あがった市場でのシェアーを争うビジネスが主流です。しかし既存ビジネスのシェアー争いだけでは最後は価格競争の消耗戦となる可能性があります。今新しい市場創造こそが望まれるのですが、それには“産業を興す”技術と潜在需要の掘り起こし、そして関連企業の総合力が必要です。さあ、どんな新産業を興すか、テーマは大きいですが皆で知恵を出してみましょう。プロダクトやサービスが大きな産業に発展する夢を持つのも悪くありません。
(鶴見)

Friday 17 September 2010

社内ポリティックス

長年海外で働くと様々な人との出会いがあります。米国で某部門ヘッドであったA氏は相手が日本人であろうがお構いなく機関銃のような早口でしゃべります。長身ですこし背を丸め速足で歩き人懐っこい笑顔が印象的ですが、話はするどく相手に切り込みます。厳しい仕事ぶりでしたが部下からは100%信頼をされていました。彼はある時上司のトップとうまく行かず会社を去ってしまいました。何年か後、同じく米国でセールスのトップに地域で優秀な成績を収めたB氏が抜擢されました。しかし彼も数年後本社での面倒な社内ポリティックスに巻き込まれ結局地元に戻ってしまいました。

この二つのケースは共に特異な出来ごとではありません。しかし、あれだけ信頼の厚かった二人が何故職を離れたのでしょうか?業績が悪くビジネスに失敗したわけではありません。マネジメントとしてそれなりの実績も残してきました。あの二人の性格を思えば社内のゴタゴタが耐えられなかったのでしょうか?仕事は本来お客の為に仲間と汗をかき会社や社会に貢献することです。しかし、単純にモノやサービスを売るだけの仕事からマネジメントになれば仕事はそう単純ではありません。社内の交渉事に時間と労力を費やすことは無駄ではないか?社内ポリティックスも無駄だ、人生は短い、他にも仕事は在る、とA氏もB氏も考えたのかは分かりません。

一般的にマネジメントで仕事の範疇が広がると関係者は増え、改革を実行するとなると利害の対立も生じます。ポリティックスにも巻き込まれます。人事もたいへんです。誰しも仕事は楽しくやりたい。社内の説得よりお客の説得の方が楽かもしれません。しかしマネジメントになれば仕事は複雑化します。社内の無駄なポリティックスは無い方が良いに決まっていますがマネジメントになれば避けては通れません。実際、これまで面倒な社内折衝も含めて、楽しげに仕事をしてきたマネジメントを何人も見てきました。会社を去るのも、仕事を変えるのも一案です。そして社内ポリティックスをものともせず、複雑な仕事にチャレンジするのも選択肢です。最終的に自分の人生は自分で決めるしかありません。
(鶴見)

Sunday 29 August 2010

「仕分け」のチャンス

英国で暮らしている日本人は住宅環境など住みやすいと感じている半面様々なサービス分野、例えば宅配便や水漏れ修理でお粗末なサービスレベルに困惑した経験は誰にもあるでしょう。こちらにヤマト宅急便があったらどんなに便利かとうらめしく思われた方も多いのでは?反面日本に帰国した時、過剰とも言えるサービスにこれは無駄?と思われた経験もおありでしょう。

先日こんな日本のニュースを聞きました。それは最近廃業になる旅館が多い中で旅館の再生を専門にしている人の話です。その人が手掛けた某旅館は部屋数が20で小さめの規模です。チェックインするお客様が受付の人から説明を受けます。「部屋には冷蔵庫もテレビもありません。寝具はお客がご自分で敷きください」そしてなんと「当旅館では食事も出ません。近所にはレストランもあるのでそこでどうぞ」という訳です。勿論お客はこれを承知で泊まりに来た人たちです。事業仕分けならぬ「サービス仕分け」で徹底したスリムダウン。常時働いている人は2名。そして一泊¥2100という超低価格を実現したということです。今では何カ月先まで予約が一杯とか。

もう一つ再生の例をご紹介します。私が欧州全社を担当していた当時7つの工場がありました。そこで工場の見直しの為、工場運営に経験豊富なある人に改革を頼みました。その人は工場の運営の合理化はやりましたが、結局大胆な仕訳は出来ませんでした。数年後、結局工場はアジアに移管するかアウトソースすることになったのです。さて問題は、それが旅館であろうが、工場であろうがドラスティックな変革を目指す場合、単なる改善ではなくゼロベースで考えられるか否かが決め手になるということです。事業や工場への思い入れがある為に徹底的な改革のチャンスを逃し、部分的な改善に終わってしまうことが多々あります。最終的には徹底した荒治療が必要になったケースも多いことを見逃すことはできません。皆さんの周りで今一度ゼロベースで思い切った「仕分け」をするチャンスがあると思いますがいかがでしょうか?
(鶴見)

Monday 23 August 2010

小笠原諸島の花と鳥に学ぶ

皆さんは小笠原諸島を訪れたことはありますか?私は行ったことはありませんが、30の島々からなり日本本土から1000キロ離れている自然豊かな島だそうです。現在ユネスコの自然遺産登録の申請がされており来年にはその結果が出るということです。先日ニュースで、現地で自然保護をしている方の興味深い話を二つ聞きました。

一つ目は小笠原諸島が南洋に位置しているにも拘わらず、そこには他で見られる色鮮やかで派手な花は少なく、地味で白い色の花が多いという話です。その理由が面白く、小笠原諸島では花の種類が少なく「花同士の競争」がないからだそうです。諸島は誕生以来これまで大陸と地続きになったことはなく、離れ小島であったため、昔からの種のみが生存し花の種類も限られてきました。南洋によく見られるあの色鮮やかな花々は出来るだけ目立つことで蜂などに花粉を運んでもらい種の存続を図るそうです。小笠原諸島の花はこの花同士の競争がないため、目立つ必要がなく、美しい色をつくるエネルギーを使わないことで白い花が多いとか。いわば花自身の「さぼり」の結果という訳です。言われてみると、なるほどと思います。

二つ目は小笠原諸島特有のアカガシラカラスバトという鳥が外来の動物である猫に襲われるケースが多く今や絶滅の危機にさらされている話です。理由はこの鳥が木の実などの餌を地上で取るためなんと地上に巣を作り猫に襲われるとのこと。何故地上かと言えば、昔から猛禽類が唯一の天敵であった為この鳥は地上に住むようになったようですが、突然外地から人によって持ち込まれた猫が野生化し、それに襲われるようです。なんという悲運でしょうか。

さてこの二つのケースを聞いて考えさせられました。それはあたかも企業の存続を暗示しているかのようです。企業は競争にさらされれば生存の為様々な工夫を凝らします。美しい色彩で蜂をおびき出すように市場に情報を発信してお客を引きつけます。しかし競争がない時は島の花が目立たない白い花しかつけないように活動が低下します。また猫に襲われるアカガシラカラスバトのように、突然新しい競争相手が現れると対策も打てぬ間に企業は倒産の危機にもさらされます。日本国内で外部からの競争から過剰に保護されたドメスティック産業はどうでしょうか?突然世の中を変える変化が起こった時に死滅する産業。どちらも身に迫る危機感の自覚がないことが共通点でもあります。毎日100という種が死滅している自然界。これを通して我々は何を学ぶべきでしょうか?
(鶴見)

Friday 20 August 2010

食べ物にケチをつけると・・・

私は海外に出ると必ず現地の人たちがどんなものをどうやって食べているかを観察します。テーブルマナーでもアメリカ式、イギリス式、フランス式ではかなり違います。たとえばアメリカだと切ってからナイフは置いて、右手にフォークを持ち替えて食べるのが普通です。ロンドンのレストランで一発でアメリカ人と分かっちゃう仕草の代表です。ヨーロッパ大陸の人達は料理を食べてナイフとフォークをお皿に真横に並べるとご馳走様ですが、イギリスだとナイフとフォークはまっすぐ縦に置きます。これは言葉を聞かずにイギリス人をレストランで判別するいい方法なのです。イギリスの影響が強いオーストラリアやニュージーランドではどうか知らないのですが、少なくても今まで間違った例がありません。どうも日本で45度に置く根拠がどうもはっきりしませんが、この中間なのでしょうか?

私は料理が好きなこともあって、食は文化の要素の中で最も重要なものだと思っています。芸術、文学といった分野よりもより日常生活に直結しているだけに思い入れは激しいわけです。世界中の料理の中でも民族を超えて美味しい、あるいはポピュラーな料理があります。やはりフランスや中華料理の洗練度は群を抜いていますが、反対にハンバーガーやピザの普及度合いはすごいものです。最近は寿司も仲間入りしたといえるでしょう。しかしなんといっても誰もが一番すきな料理は、今まで自分が食べて育ってきた料理なのです。これは一般的にうまい、まずいを超越した文化の源泉と考えます。納豆なんかは知らない人にとってはかなりのものだと思いますが、私なんか大好物です。

というわけで裏返しに考えると、海外でその国の料理を褒めたり、料理法を聞いたり、本当に美味しいと思って楽しく食べているとホストとの距離がぐっと近づきます。この点私はかなり食べ物の許容範囲が広いので過去に非常に得をしていると思います。また本当に楽しい時間をすごすことができました。反対にその国の料理の悪口を言うと、間違いなくその人たちはいやな思いをします。イギリス人は結構自虐的なんで自分からいう人もいますが、酔っ払って「イギリスの飯はまずい」なんて会社の同僚の前で思わず言ってしまわないように注意しましょう。 (西川)


Wednesday 18 August 2010

日本企業再生の第一歩

日本製品の強みは高品質。こう言われて日本が急成長を遂げた時代から今世界は大きく変わろうとしています。日本製品の高度な技術と性能そして信頼性は世界の消費者を魅了しました。かつて“Made in Japan”が”安かろう、悪かろう“の代名詞であった時代は今の若者には想像も出来ないでしょう。

しかし最近、この高付加価値戦略に陰りが見え出しました。日本製品の優位性は製品によっては失われつつあります。また主力の輸出相手国は欧米に加え新興諸国が大きなウェイトを占めてきました。そこではボリュームゾーンといわれる低下価格帯商品が主流です。消費者は高機能より実用的な商品を求めています。さて日本企業に秘策はあるのか?

今回は二つの事例をご紹介します。ある時米国でそれまで長年お付き合いいただいた主要顧客が他社製品を大量に買い付けました。理由は他社製品が性能や仕様では劣っていたもののお客の使用目的には充分というものです。”Their products are good enough.”というお客のコメントは今でも忘れられません。当社製品の優秀さは分っているが、そこまで必要はないというものでした。

もう一つの事例はサービスに関するものです。その顧客は日本の大手放送局でした。ドイツ支社で取材用に使っていた当社の製品が故障をしたので当社の現地支店に修理で持ちこまれました。しかしそのスピードや対応に対してクレームがつきました。理由は日本でのサービスのレベルに比べて海外は余りにお粗末ということでした。このケースはすぐに日本人サービスマンを派遣して対処をしましたが、日本のお客様が海外でサービスを受ける時に不満が多い理由はその対応やスピードなどで見劣りするからです。日本人の要求度は現地人よりはるかに高いのが普通です。

さて、事例一では日本製品の過剰な性能、事例二は海外でのサービスに関してのクレームですが、これを通じて感じたことは両事例とも残念ながら「サプライヤーがお客の目線でビジネスをしていない」という事実です。お客の満足度は国民によって異なります。要求も違います。世界を席巻した日本企業に求められるものは、もう一度謙虚にお客様の目線でものを見ることを始めるべきかと思います。これが日本企業再生の第一歩ではないでしょうか?
(鶴見)

Thursday 12 August 2010

これは使える! ロンドン自転車ハイヤースキーム

愛すべき我らの ロンドン市長で自転車大好きオジサンでもある、ボリス・ジョンソンの肝いりで導入されたロンドン自転車利用システム(Barclays Cycle Hire)が開始されて数週間経ちました。年間45ポンドの登録料を支払ってキーを受け取ると30分以内の利用は一日何回乗っても無料という、使い方によっては非常に便利なシステムです。特にドッキングステーションが無数にある市内(基本的にリングロード内、Congestion Zone内)に住んでいる、あるいは仕事をしている人にとってはメリットが大きいと思います。

というわけで「これこそ待ってたシステムだ」と私も早速登録。昨日からシティーにあるクライアントの訪問、買い物、ジムへと大活躍でした。当然のことながら導入のみならず、メンテナンスに大変なコストがかかるわけですが、それに比べて利用料が安いのはどうしてでしょうか?実は今回のスキームはBarclays Cycle Hireと呼ばれているだけにバークレー銀行がスポンサーになって自転車からドッキングステーションまでバークレーの名前、ロゴが全面に出てきています。地方政府であってもこれだけ民間資本とのタイアップを推進し、躊躇なく宣伝をしてもらう。ケン・リビングストンの労働党市長じゃ考えられなかったことですね。いやー、これは便利! (西川)

スキームの詳細はwww.tfl.gov.uk/BarclaysCycleHire

Wednesday 11 August 2010

本を出版しました

「ビジネスパーソンがよく使う英熟語」を2010年7月に中経出版から出しました。

英語圏の人たちが自分達の思いを最も自然に表現するときに使う英熟語を日本人は学校で学ぶチャンスがあまりありません。英人の使うそれらの表現を聞いたとき、日本人駐在員がきょとんとしている姿を見て、これでは日本人ビジネスパーソンはたいへん「損をする」と思うようになりました。

そこでムリは承知の上で自分の長年の国際業務経験よりビジネスパーソンなら知った方がよい熟語を200選定したのがこの本です。日本から来てすぐに使うのは簡単ではありませんが、せめて意味を知っていれば、コミュニケーションがはずむと思います。

値段も税込みで945円と比較的手ごろですので、日本にご出張の際には本屋さんで見てください。なお、ロンドンでは三越内のJP-Booksに置いてあるそうです。 (安高)

ご購入は: JP-Books (英国内)アマゾン(日本)までどうぞ。

Tuesday 10 August 2010

差別とチャンス

Wisley Golf Clubは今から20年前にRobert Trenton Jrの設計でオープンしたメンバーシップゴルフクラブです。会員数約700名、30以上の国籍の会員がいる国際的なクラブです。4年前私はここの会員になり、以来ここでのクラブライフは英国生活の大切な一部になっています。

先日このレストランで働くAlexとラウンドが終わり一杯飲む時に話すチャンスがありました。彼は中年でとても誠実で感じの良い人です。経歴を聞いてみると以前は英国の某有名なゴルフクラブで働いていたが嫌になり辞めてここに移ったとか。以前の職場で彼はメンバーからlook downされる、つまり目に見えない差別を経験したということです。英国の伝統的なクラブの中には今でもある種の差別があるようですが、こうして実際に働いた人から聞くのは初めてでした。Alexはここのゴルフクラブではそんなこともなく楽しく働けると満足そうでした。

さてここで一つの仮説を立ててみました。①日本人は人種差別をしない。②日本企業はローカルの人を能力で雇う。③従って日本企業ではretentionの率が高く優秀な人材が集まる。では実際はどうなのでしょうか?日系企業では人種差別問題は少ないでしょうがローカルと日本人、男女の間で本当に差別はないでしょうか?入社したローカルの人の能力をフルに発揮させる環境を作っているでしょうか?ここでは優秀だが差別を感じている人もいます。日本企業が肌の色、人種、性、年齢の差別なく皆がモチベーションを高くして働ける環境を作れば優秀な人が入り大いに業績に貢献してくれるチャンスもあるように思います。
英国での人種差別問題。この目に見えない問題は日本企業の発展に重大な課題とチャンスを同時に投げかけているように思います。ゴルフクラブに働く人の質と職場の環境が密接に関連していることを知り考えさせられた一件でした。蛇足ながら、Wisleyのメンバーになり会員の間での人種差別を感じたことはありません。
(鶴見)

Saturday 7 August 2010

コミュニケーションの基本

ビジネスや家庭におけるコミュニケーションの在り方については多くの人の関心事で、この得手、不得手が成功の鍵を握っていると言っても言い過ぎではありません。さて以前にソニーの創業者の盛田さんのコミュニケーションのセンスについて書きましたが、今回は私が実際に体験したある出来事をご紹介します。

それは業務用に使われるビデオシステムをソニーが1972年に発売した時のことです。私は当時米国でこのシステムの市場導入を担当していました。その為事前に日本で研修を受けるため出張し発表会にも参加しました。そこでは盛田さんご自身がVIPのお客に直接新製品の説明をされていました。入れ替わり立ち替わり来られるお客に何度も同じ説明をされていたようでした。

米国に戻り同じようにVIPをご招待して導入会を催すことになり、私は一つの提案をしました。それはVIPへの説明をより効率的にするため何人かのお客様にまずシステムの基本的な紹介をして、その後個々のお客様をアテンドして詳細を説明するという案でした。基礎的な話は皆さんで一緒に聞いていただく方が効率的と考えたのです。ところが当日盛田さんがこられ、この案は即却下されました。このユニークな説明商品を一方的なプレゼンで理解していただける筈はない、お客様と一対一のコミュニケーションで初めてこの商品のコンセプトを分かっていただけるという理由でした。

確かに説得は相手の反応があって初めて出来るものです。今日もオフィスで、会議室で、家庭で毎日コミュニケーションが行われています。さて果たしてどれだけの人が聞き手の反応を見ながら、聞きながらコミュニケーションをしているのでしょうか?決められた時間と決められたパワーポイントで一方的な話をしても聞き手が本当に納得したか、時には逆効果もあるようですがいかがでしょうか?
(鶴見)

Wednesday 28 July 2010

オフィスを見ればマネジメントがわかる

私の自宅からロンドンまでNational Railで30分。60歳以上の特典Freedom Passのお陰で朝のラッシュを除けば電車は無料でよく利用しています。駅に着くとまず目に入るのがそこらに散乱する読み終わった新聞とペットボトル。同じく電車の車内もゴミだらけ。日本では「読み終わった新聞は棚に置かずにお持ち帰りを・・」と車掌さんがアナウンスしていましたが、そんなレベルではありません。座席、床かまわずちらかり放題です。特に夕方の電車がひどいです。乗車する人も別に気にはしていないようです。イギリス人は公共の乗り物や道路をゴミ箱と同じと思っているのかと疑いたくなります。あれほど美しいEnglish GardenやParkを持つ国民が何故車内のゴミに関して無頓着なのか?読者でこの理由をご存知の方がおられれば教えてください。

ゴミと言えば最近は紙の情報が少なくなった為かオフィスに書類の山を築いている人は昔より少なくなったようですが以前私の日本人上司であった何人かの方のオフィスをご紹介します。A氏―オフィスの中は書類に溢れ何冊もの本やレポートが机の上に無造作に積み上げられていました。しかし、ご本人は何の情報はどこにある、と全て分かっておられたようです。B氏―やはり多くの書類が机や棚の上に置かれていましたが、A氏と違い書類は全てファイルに入れられ整理されていました。C氏―机の上にファイルも紙も殆どありません。書類は目をサッと通して全て秘書さんに渡したのか、捨てられたのかどちらかでしょう。

さてこれからは私の想像です。何の科学的データもないので内容に責任は持てませんがこの情報の保持、処理の仕方とマネジメントのスタイルに関連性があるように思うのです。A氏は卓越した知識を持ち人間味溢れるスーパーマネジメント、人との話を大切に詳細まで解析をする方です。あらゆる情報に精通しています。B氏は頭も超明晰で判断もはやく理論だった話は群を抜いていました。当然関連書類が必要な時にはサッとファイルが出てきます。C氏は優先順位が低いものなどは全て部下にまわしご自分はコレと思うものだけを処理する割り切りの早い率先即決タイプです。余計な情報は目もくれず、紙情報などは自分で持たないタイプです。私はと言えば未処理の案件に関する書類が机の上に積み上がるタイプで情報の管理がヘタクソです。さて皆さんはどのタイプですか?そして身の回りの整理具合はいかがでしょうか?情報が紙の時代のお話ですがご容赦ください。
(鶴見)

Wednesday 21 July 2010

トップの姿勢

日本の財政はこのままでは破綻が目に見えています。財政の再建を日本の緊急課題と考えるのは当然です。今回の参議院総選挙で消費税増税を打ち出した民主党が大敗を喫しましたが、では国民は大半が消費税の値上げに反対かと言えばそうでもなく、意見が二つに割れている状況です。問題は増税前にやることがあるのではないか、という議論です。まずは税金の無駄使いをなくす。同時に経済成長を促す。企業が効率をあげコストを削減し成長戦略を実行するのと同じです。

さて国でも企業でも再建に重要と思われるポイントを一つ述べたいと思います。それは国であれば為政者、企業であればマネジメントの姿勢です。首相は言うに及ばず議員、官僚、企業の社長からマネジメント全ての人までが再建がもたらす「苦しい改革」をまずは自ら身をもって受け入れることです。定員の削減、給料の見直し、その他いままで当たりまえと思われた各種のフリンジベネフィットも見直しが必要です。国の救済を求めるGMの幹部が議会公聴会に出席するのに社用機を使ったことが問題視されました。たとえ社用機の使用でいかに効率をあげられても、国の税金で救済する会社のトップが社用ジェットでj議会に乗り込むのでは国民の賛同が得られないのは当然です。

私も欧州でリストラをやりましたが、今思えば立派すぎた個室などを変えなかったことを後悔しています。日本の選挙民も増税の話を始める時に贅沢な議員会館が出来ては本気度を疑います。皆が身を切る前に上に立つ人がまずは率先して模範を示す必要があります。その額は決して大きくなくとも影響は大です。人は誰でも自分に不利なことはやりたくありません。自らが辛い思いをする政策には誰もが反対します。しかし残念ながら国や会社を良くするにはトップを含めて全体が痛みを感じないと達成できません。国や企業の再生を果たすにはトップの強い思いと自らを厳しく律する覚悟と実行力があってこそ、全体が納得して動き始めることと思います。日本の財政再建もまったなし。その為には為政者の姿勢がまずは問われると考えます。
(鶴見)

Monday 12 July 2010

マネジメントの退場

金融庁は2010年3月期から1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と金額を個別に開示するよう上場企業に義務づけました。金融危機を境に株主による経営監視が厳しくなっていることを受けて財務状況にそぐわない「お手盛り支給」を一掃するのが狙いのようです。これについては国内でも賛否両論があるようですが、今回はマネジメントの給料について考えてみたいと思います。

一般社員に比べてマネジメントの給料が高い欧米ですが、その理由の一つに経営責任を負うことでHigh Risk, High Returnが背景に考えられます。経営の結果によっては解雇されるケースが前提にあります。その理由が何であれ、結果責任を問われるということです。日本では違法性などよほどの理由がなければ業績問題でトップが突然クビになるケースはそれほど多くはありません。交代の多くが在職期限や年齢などが理由です。日本ではそれほどの高給が支払われないのもある程度納得できますが、それにしても欧米との差が大きすぎるように感じます。

私は欧州部門のトップだった頃、何人かのマネジメントに代わってもらいました。私が問題視したのは業績だけでなく、組織の硬直性や人材の活性化にありました。官僚的なマネジメントスタイルで他の部門とのコラボレーションも進まず若手も伸びていません。評価の全てが数字化されている訳ではありませんが、しかし総合評価をするとどうも交代してもらうだけの理由があると考えたのです。さて給料の問題に戻りますが、このようにあるレベル以上のマネジメントはその理由が何であれ交代させられるリスクがあることで、高い給料もそれなりの理由があります。一方一般社員のリストラもやむを得ず実行しましたが、多くの場合個人のパーフォーマンスとは関係ありません。どちらのケースでもそれなりの正当な理由と決められたプロセス、そして適切な処遇が必要であることは言うまでもありません。解雇や交代が正しかったかはその後の結果で判断されます。交代人事が恣意的で後釜の人選で一層事態が悪くなるようなら、それこそそれを決めたトップがクビになるのが当然と考えます。現実は任命責任を負うトップが少ないのが問題と思うのですが。
(鶴見)

Wednesday 7 July 2010

貴方ならどうしますか?

昔アメリカで働いていた頃、私はあるアメリカの大手企業への大規模なシステムの売り込みに奔走していました。ようやく30歳を過ぎセールスもまだ駆け出しの頃です。オフィスはサンフランシスコ、ソニーアメリカの一支店です。競合相手はやはり日系企業で製品の品質はともかく、価格面ではかなり差をつけられ厳しい状況でした。

そんな中、ある日突然日本から電話が入りました。会社のトップ、盛田さんご自身でした。「私はそのアメリカ企業はトップを含めて良く知っている。大変重要な案件なので是非成功して欲しい。」会社のトップから直接電話を受けてビビりましたが一層頑張ったものです。盛田さんの経営スタイルは部下を叱咤激励し率先垂範でやられる非常なアクティブなものです。当時はパソコンもまだなかったので主なコミュニケーションは電話です。このように重要と思われることは中間にいる部下を飛ばして直接担当者に電話をされることはめずらしくありませんでした。残念ながらこの商談は負けて結果は盛田さんを失望させることになってしまいました。直接お叱りは受けませんでしたが、この件は今でも忘れられません。

その後この“中間部下飛ばし”とは別の経験をしました。そのマネジメントにある日直接担当者から相談があったようです。そのマネジメントは担当者にまずはあなたの直接の上司に話なさい、ということで終わったようです。自分が直接担当者と話をしては中間の管理職の人の立場がない、ということでしょう。部下を育てるのは我慢も必要とよく言われます。しかし担当者が直接自分の上司を越えて相談を持ちかけるのは、それなりの事情があったことと察しがつきます。
このようにマネジメントのスタイルは人によりケースによっても異なります。しかし常に企業内のランクを重んじていては風通しのよい企業風土は作れません。担当者が事情を最もよく知っています。現場からの重要なインプットを大切にして時には現場へのダイレクトの指示を出すことも大企業病に陥らない第一歩とおもいます。この使い分けが上手にできるか否かがマネジメントに試されているような気がします。
(鶴見)

Friday 25 June 2010

ステータスシンボル

最近マネジメントの個室は昔に比べて随分質素でサイズも小さくなりました。その理由は土地代の値上がりの他に仕事の仕方が変わったことが考えられます。ネットの普及で今や自分のオフィスを持つ意味も少なくなってきました。紙のファイルに必要なスペースも要りません。個室が必要なら共有の会議室を使えばことが足ります。

私が20年前に英国に初めて来た時、立派なオフィスが用意されていました。実はこのオフィスは出来た当初は外からリクルートしたローカルの英人トップに用意されたものであり、彼は社会的にも地位の高い高名な人でこのオフィスは彼に相応しいものと思われます。しかし日本人の自分には相応しくないと感じたものです。日本の本社を思えばこの英国のオフィスは贅沢でした。日本と英国を同じ基準を当てはめるのは間違いですがそれが正直な気持ちでした。またこんなことも考えました。それは我々のお客様である放送局の方が訪ねてこられた時にサプライアーが立派なオフィスに入り、立派な車に乗っていたらどう感じられるかということです。会社のイメージは大切ですが、ビルや車やオフィスを立派にするより、製品やサービスを充実させて欲しいとお客様が思われるのは当然です。

会社が大きくなるとそこで働いている人の感覚も変わってきます。そこに不必要な贅沢や社会的に見ても不合理が出てきます。社会的なステータスシンボルはオフィスやビル、車などではなく、それはお客や働いている人、株主から尊敬される会社の格であるべきです。単に利益を上げるだけでは格が高いとは言えません。昔盛田さんは人格があるように社格というものがありそれを高めることが大切と説かれていました。個人のステータスシンボルは階級社会であるイギリスには今後も残り続けるでしょうが、それが物質的なオフィスや車などではなく、その人の資質や人格であればと願っています。外部から目に見えないステータスシンボルこそが重要と思うのですが如何でしょうか?
(鶴見)

Wednesday 16 June 2010

これからのオフィスは?

今回はオフィスについての話です。ずっと以前のことですが、当時アメリカの東部ニュージャージー州にある4階建てのお洒落な自社ビルのオフィスに勤めていました。その地区は高級住宅のある閑静な所で今思えば場所代もかなり高かったろうと想像できます。



マネジメントクラスの人には小さいながら個室が与えられていました。部屋には医者のように、大学のディプロマ、賞状や家族の写真などを飾っている人が多かったようです。一般の人は大部屋に机を並べていましたが、個人の机やファイルは隣とパーティションで区切られています。この仕切りの高さがかなり高くオフィスを見渡しただけでは座っている人の影も形も見えません。一人一人にまるで個室のオフィスで働いているかのような空間が提供されていました。このプライベートな空間を作ることが米国人にとって他人に邪魔されず能率も上がり好まれたものと思われます。(勿論居眠りをしていても分かりません)。



今思えば当時はまだ今日のようにオフィスは静かなパソコン中心の世界ではなく電話や話し声などの喧騒が聞こる場所でした。ある日のこと、東京の本社からこのパーティションを低くして働いている人の顔が見えるように、との指示が出ました。日本のオフィスを知っている赴任者にとっては何の抵抗もありません。むしろその方がオープンな雰囲気もありお互いのコミュニケーションも良くなるように思ったものです。しかしアメリカ人にとってはどうだったでしょうか?



その後様々なオフィスで働きましたが、傾向としてはマネジメントの個室は廃止、または必要最小限、そして外から見えるガラス張り、一般の人のデスクもオープンでパーティションは無く、決まったデスクもない会社もあるようです。また連携すべき部門間に溝がある「サイロ化」の問題がある場合、同じフロアーで隣接させるなどの工夫をしたこともあります。思えば入社当時は大部屋に課ごとの小さなブロックがいくつもあり、お互いに背中がくっつきそうな狭さの中で働いた覚えがあります。違う部署の人も声を出せば届く距離で、改まって会議などやらないでもすぐに意思の疎通が出来ました。現在はPC,携帯電話、TV会議などでコミュニケーションが改善されたかと言えば、必ずしもそうではありません。やはり実際に顔と顔を合わせ、お互いに感情を感じ取る生のコミュニケーションは以前にもまして重要になっています。その意味で「オフィス」の在り方を再考する良い時期だと思います。
(鶴見)

Monday 7 June 2010

社内派閥

このところ英国もようやく夏らしい天気になってきました。皆様はお元気でご活躍のことと思います。さて今回はマネジメントのある行動について考えてみたいと思います。昔米国で勤務していた頃、あるローカルマネジメントのトップが就任しました。彼は某米国企業のトップだった人で大変優秀な人であったと記憶しています。その人は就任後周りのスタッフに自分の元いた会社の人を新たに雇いいれました。

このようにトップが周りに自分の息のかかった人間で固めるのは欧米企業ではめずらしくありません。社内ではいつしか、「XXマフィア」と呼ばれる集団ができました。日本では学閥がある会社もありますが、気心の知れた連中で固める派閥のようなグループが出来てしまう企業も少なくないようです。

チームワークという面ではメリットもあるのかもしれません。また知人でも優秀な人を採ること自体はプラスなのでしょうが、悪くすると自分の保身のためにお気に入りの人間で周りを固めることにもつながります。これでは人の正当な業績の評価ができなくなり、社内のモチベーションに問題を生じ、企業の弱体化にもつながります。ある日系の現地会社では優秀な(と思われていた)現地人のトップをおいて安心していたら周りを無能な人間で固められてマネジメントがうまく行かなくなった話を聞きました。

繰り返しになりますが、お友達の中でも優秀な人間はいますので、このような状況をどう評価するのかは注意が必要です。しかし何と言っても、このような閥や特定のグループをつくる体質こそが問題です。私のロールモデルである盛田さんは人をその気にさせることが上手でしたが、同時に人の能力の評価、限界については厳しい目を持っておられたと感じました。

社内で変なグループ化ができるようになる原因はやはりトップの姿勢や人の評価能力にあるように思えます。そして海外オペレーションのような疎遠な場所で同じマネジメントが長期的に指揮をとるのは権力が大きくなりすぎたり、人の硬直化を招くことで風通しが悪くなったりグループ化が生じる場合もあり要注意です。皆さんのご経験はいかがでしょうか? (鶴見)

Wednesday 26 May 2010

モンティーとブラックベリー

先日ポルトガルの南端アルガーブにいってきました。アイスランドの火山灰騒ぎでいけるかどうか微妙でしたが、幸運なことに天候にも恵まれて、無事一週間の旅を終えることができました。アルガ-ブでのお目当てはシンプルで安く、かつ新鮮なシーフードとビーチ。そして何よりもゴルフです(またゴルフネタです、失礼)。アルガーブはキンタ・ド・ラーゴ、サン・ロレンゾを初めとしてヴィラ・モウラ、ヴィラ・ド・ロボ、ヴィラ・ソル、ペニーニャと有名コースが目白押しで、ゴルファーにはたまらないデスティネーションです。

そんなこんなで帰路、ファロ空港のBAチェックインカウンターに並んでいると、なんだかよくテレビで見る人が隣の列にいるではないですか。なんと、今年のライダーカップの欧州キャプテンでプロゴルファーのコリン・モントゴメリーです。私が大きなゴルフバッグをカートに積んでいるのを見ると彼がニッコリとするのでこちらも微笑み、頷き返して、ゴルファー同士の無言の契りを交わしました。ゴルフという人生にも通じるゲームを共有する者、ゴルファーだけに理解できる一瞬でしょう。

話は全く変わりますが携帯端末システムのブラックベリーが普及し、仕事の能率が非常に向上しました。、特に日本語対応がOSレベルで容易になったことから、エクスチェンジサーバーを持たない中小企業や個人でもBIS(Blackberry Internet Service)を使って、楽にメールのやり取りができるようになりました。逆にいつでも仕事モードになってしまうので食事中、あるいはベッドの中まで持ち込んで家庭不和の原因にもなりまねません。巷にはブラックベリー中毒患者が蔓延しているわけです。

という私もその一人で、ガトウィック行きフライトに乗り込むバスの中でもメールをチェックをしている始末。そしてふと顔を上げると同じくブラックベリーを睨みこんでいたモンティーが顔を上げ、また視線が合ってしまいました。お互いに苦笑いし、「こりゃ、やめられないな。」とゴルファー同士の無言の会話となりました。 (西川)

Thursday 13 May 2010

妥協を知るイギリス人のしたたかさ


いろいろな話題を提供し続けた今回のイギリス総選挙は過去65年で始めての保守党、自由民主党の連合政権誕生という形でドラマティックな決着を見ました。末期症状の労働党は長年のサポーターでもあるガーディアン誌にも見捨てられ、ゴードン・ブラウンの「頑固女」失言でダウン、歴史的な敗北となりました。とはいえ小選挙区制に助けられて労働党は議員数をそれなりに確保し、一方自民党は得票率を当選に反映できなかったのです。その結果、第一党となった保守党が過半数を取れない ”Hung Parliament” となりました。

個人的にはニック・クレイグと彼の率いる自由民主党が今回のハイライトだと思っています。何しろ今まで ”Nick, who?” なんていわれていたほぼ無名の政治家であり、自民党が政権をとることは不可能、と無視され続けてきました。それが史上初めてのテレビ討論会で若々しいルックス(デイビット・キャメロンもそうですが)、信頼感、誠実さを評価され、一躍トップに躍り出ました。そして最後までキャスティングボードを握り、歴史的な政権入りを果たしたわけですから立派なものです。

政治とは大きな命題を解決してゆくものです。個々のマイクロなアイテムに固執していると大きな姿が見えなくなってしまうのです。今回は英国が経済的、軍事的(ちなみに英国は戦時下にありアフガニスタンでは200人以上の戦死者を出しています)な危機にあり、それを乗り越えるために保守、自民がお互いに最大限の妥協をしたわけです。今まで散々罵倒しあっていた二人が急に親友のように仲良くし始めたのを見て、「イギリス人って本当に食えない連中だな。」と思ったのは私だけでしょうか? (西川)

Tuesday 4 May 2010

マネジメントスタイルの使い分け

国によってマネジメントのスタイルは異なります。欧米では会社のトップや上司が明確な方針を出し、その下で各自が与えられた仕事を実行します。それはあたかもボートのエイトのコックス(トップ)が号令をかけ、漕ぎ手(部下)はそれに従って全力で漕ぐ(仕事をする)のに似ています。一人の優秀な人間が全体を見て状況を判断して指令を出し、それを下の人が実行するシステムです。実際はそれほどシンプルではありませんが原理は同じです。従ってトップマネジメントの優劣が企業の業績に直結します。欧米企業のトップの報酬が飛びぬけて高いと言われますが理由はそこにあるように思います。このシステムの背景には多様な移民で成り立つ欧米と単一民族の日本の環境の違いに原因があるとも言われています。

一方日本ではトップは部下からの信頼が厚いことで選ばれるケースが多いようです。これはあたかも神輿(みこし)の上にトップが乗り、それを部下が担ぐのに似ています。トップは音頭をとりながら全体の調和を保ちます。お神輿は必ずしもボートのように一直線には進みませんが大体の方向は間違わずに進みます。担ぎ手の暗黙の合意のもと、全員参加で神輿はうまく運ばれます。私は英国で働いていた時代、よく日本人赴任者を集めて私が知り得る会社の状況や部門全体の話をしました。(もちろん、これがローカルの人との不平等にならないように人事部門に相談したうえでのことです)。何故なら日本人は一般的に会社や部門全体の動きを知ることが自らの仕事をする上で重要と考えるからです。日本の会社で会議が多くなるのはこの情報の共有とコンセンサス重視に原因があります。

他方現地人は本人個人の権限や責任を重要視しますので、自分に直接関係しない話や会議は基本的には不必要と考えます。以上は日本と欧米のマネジメントの違いのごく一面を表したもので、どちらのシステムがより優れているかは一概には言えません。現地でマネジメントをする上では“スピード感と効率の欧米システム”と“暗黙の合意と調和の日本システム”をよく理解することが重要なことは明白ですが、単純に欧米人には欧米システム、日本人には日本システムを適用するのではなく、この両者を時と場合によりミックスしたり使い分けたりすることが出来れば最高と思います。皆様のお考えをお聞かせください。
(鶴見)

Friday 16 April 2010

最後は理屈じゃないよ


今年のマスターズは近年まれに見る素晴らしい大会でした。タイガーのツアー復帰から始まって、ワトソン&カプルスのベテラン、ポールター&ウエストウッドのイングランド勢大活躍と盛沢山の内容でした。そして最後はフィル・ミケルソンの大爆発で優勝、18ホール脇でエイミーとしっかり抱き合った彼の頬には一筋の涙が・・・。私まで感動のあまり泣けてきました。

ミケルソンは過去3度のメジャーチャンピオンに輝く実力者でありながら、プロゴルファーの中でも一二を争う人気を誇ります。人柄もよくファンサービスも熱心であれば、単なる「いい奴」で終わってしまいます。ところが彼の場合は理屈を超えたハートから沸きでてくるプレーがファンを魅了して尽きません。アーノルド・パーマーやセベ・バレステロスがそうだったようにです。特に土壇場に立った時、思い切ってリスクをとる姿に感動するのは私だけではないと思います。

今回は最終日パー5の13番ホール2打目が彼の真骨頂でした。1打差でリードしたテーショットを林に打ち込み、残りピンまで207ヤード。ところがグリーン手前にはクリークが走り、ライはパイン・ニードル。おまけに隙間はあるもののボールは木の後ろに止まってしまうという状況です。普通だったら現在の順位を考えてもフェアウェーに出す安全策を選択するところです。彼なら3打目で寄せてバーティーを取るのも難しくないはずです。反対に失敗すればパーどころかボギーでトップに並ばれてしまいます。多分ニック・ファルドなら間違いなくレイアップしていたでしょう。ところが彼は木と木の隙間が充分であると判断すると、迷いもせずに6番アイアンを抜いて渾身の一振り。半ヤードでクリークを超えたボールはピンから4フィートに止まったのです。

ゴルフは人生における様々なことを教えてくれます。非常に重要なビジネスの決定においても最後は”Go with what your gut says.” なんですね。理屈ではなく、こういう勇気のある姿に人たちは感動し、惜しみない称賛を与えるものです。 (西川)

Thursday 15 April 2010

グローバルリーダーと言葉

ある英国人マネジメントX氏とは同じ職場で働きました。彼は有名な英国の一流大学を卒業したエリートです。英国では政治家や大企業のトップにこの有名校の卒業者が名前を連ねているのはめずらしくありません。彼らは言葉使いさえ違うと言われる上流社会、いや支配階級の人間です。言葉使いで出身校が分かるとは我々日本人には理解しがたいものがありますが、X氏はシャープでしかも弁舌もさわやか、いかにも典型的な英国人マネジメントです。しかし彼一流の英国ジョークは難解、加えてその皮肉たっぷりな言い回しで特に日本人は苦労したものです。X氏が英国国内ビジネスを担当していた頃は相手が英国人で、さほど問題ではなかったようですが、欧州全体や日本本社を相手にするグローバルなポジションにつくと状況は違います。周りが彼についてゆけません。彼は孤立しリーダーシップを確立できずに会社を去ることになってしまいました。もちろんX氏は言葉だけの問題で失脚した訳ではありません。

しかし、この件でグローバルリーダーになるには明快な言葉で様々な国の人を説得する能力が不可欠であることを学びました。英語は今日、欧州で、いや世界中で誰しもが使うビジネスの公用語となっています。昔フランス人はほとんど英語を話さなかったと聞きました。話せても話さなかったと言う人もいます。今英語の達者なフランス人やドイツ人はめずらしくありません。欧州内で各国の人間が一同に集まり英語で会議をする機会も増えました。インターネットは英語の世界です。英語が不可欠であることは言うまでもありませんが、同時に英語がネイティブな英国人や米国人は英語国でない人にとって分かりやすい英語で話す重要性を理解しないと逆効果となります。しかも英国は米国と比べて文化的、歴史的に言語がリッチなだけに陥りやすい落とし穴があるように思います。


それぞれの文化と歴史を持ち多様な意見を持つ故欧州内でコンセンサスを得るのは大変です。彼らをいかに理解しまた対等に議論するのか。日本人赴任者のなかには赴任期間中は日本人との接触がほとんどで英語を話す機会が少ない人もいます。しかし欧州地域ほどグローバルなリーダーとしての訓練に適した地域はないと言って言いすぎではありません。英語を臆せずに堂々と話し、違った意見を持つ様々な国の人を説得する能力を磨く絶好の機会だと思います。皆様のご意見をお待ちしています。
(鶴見)

Tuesday 6 April 2010

ドメスティック産業のグローバル化

海外で暮らす日本人は様々な不便を感じています。アパートに入居すれば電話、電気などの生活インフラが整わず問題があれば希望の日時に来てくれないなどで、これが日本ならと愚痴の一つも出るものです。先日はイースターのお休みにロンドンへ出る電車に乗りましたが、普段の日よりダイヤが大幅に短縮されて不便を感じました。乗客は普段よりもずっと多く、それでも誰も文句を言っている風には見えません。英国は産業革命で生活インフラも先進国トップであった筈なのにいつの間にか二流国になり下がってしまいました。電車の駅や路線はゴミだらけ。それでも誰も気にしていないようです。
そこで今日は我が日本の素晴らしい社会生活インフラ、コンビニ、安全/安心を海外に売り込めないのか、という話です。これ等は皆国内産業です。私の友人であるセコムUKの社長は日本モデルを英国でも浸透させることで活躍しています。よく日本のサービスは過剰で海外では必要ないという意見も聞きますが、それは正しくありません。日本の輸出を牽引してきたグローバル製造4業種(自動車、電機、鉄鋼、一般機械)は日本の全産業の三分の一以上の利益を稼いでいますが、製造業のシェアーは毎年下降線を辿っています。この分野で働いてきた自分にとって日本のグローバル製造業の復活を祈らざるを得ませんが容易ではありません。しかし、単純に日本のドメスティック産業をグローバル化するのも多くのチャレンジが待ち受けています。最近は幾つかの会社のトップが市場を海外に求める方向を打ち出しました。

デフレの中、国内の激烈なコスト競争でどこの会社も苦しんでいます。半世紀以上前にソニーの盛田さんは大手電機メーカーがひしめく日本ではなく海外に市場を求めました。国内産業をどうグローバル化するのか?世界における日本の経済的地位が低下し活力を無くした日本を引っ張る第二、第三の盛田さんは必ず出てくると信じています。企業も国も大きなビジョンと夢を描き働く人をやる気にさせること。特に若者に希望を与え、若者も自立の精神で上を目指すこと。これが次の時代のグローバルリーダーを作る道と考えます。せっかく良い技術やサービスを持っているのに今のままでは宝の持ち腐れです。ある人は日本で第二に高い山の名前を言ってみろ、と聞いたら答えられる人は少ないだろう。誰でも富士山がNO.1と知っている。第二以下は皆同じ。だからNO.1にならないと駄目なんだと。日本のドメスティック産業をゴローバル化し世界NO.1にする夢。チャレンジする価値は十分あると思いませんか?皆さんのご意見をお聞かせください。
(鶴見)

Wednesday 31 March 2010

あるトップメーカーの凋落

今回はあるトップメーカーの凋落についての話です。1960年代にアメリカに赴任した頃私の勤めていた企業が画期的な小型軽量のビデオ(VTR)を開発しました。家庭用ビデオの草分け的な商品でした。そのモデルは白黒のオープンリールVTR、まだカセットテープが開発される以前の商品です。当時はテレビ番組の録画や家庭用ムービーはまだ知られておらず、まずはこの楽しみ方を普及させる活動を始めました。しかし、白黒でしかもオープンリール、小型とはいえまだ持ち運びも大変な製品です。本格的な家庭用ビデオの幕開けまでには数年待たなければなりませんでした。それでも企業や学校での研修や教育用途に売れ出しました。

当時はVTRというと米国のAMPEXという会社が開発した放送局用のモデルがすでに市場に導入されていました。AMPEX社は日本の小さな企業が米国に持ち込んだ小型のVTRなどは、それこそ安物の”Made in Japan”で気にもしていなかったようです。ある展示会での経験です。AMPEX社の人がブースを訪れました。そしてしきりに、この小型ビデオの性能について技術的な質問をするのです。つまり自分たちの持つ放送局用のビデオの競合商品になるのか?というのが質問の真意でした。技術的には軽自動車を大型車のCadillacと比較するようなものです。AMPEX社の人は安心してブースを去って行きました。彼はこの日本製の小型VTRの技術が将来AMPEX社の商品を置き換え会社が倒産に追い込まれることになるとは夢にも思わなかったことでしょう。

しかしその後放送局から家庭用まで市場を席巻した日本メーカーもいまやIT系米国メーカーや韓国メーカーに激しく追い上げられています。今日の勝者が明日の敗者に転落するケースはめずらしいことではありません。No.1商品を開発しブランドを育てることは大変ですが、それを自らがぶっ壊すことはそれ以上に至難の業です。1970年以降世界市場で急成長を遂げた日本がその後自己変革に苦しんでいる状況も同じです。

会社のスクラップ&ビルド、破壊と創造、これをうまく成し遂げた者が次の勝者です。これには強いリーダーシップが必要なことは言うまでもありません。単なるリストラでは会社はやせ細るだけです。集中する事業への思いきった投資と負け犬のビジネスを切る勇気、社員のモチベーションを高く保ちながら大改革をどうすすめるのか?私の僅かな経験ですが、それはまさしくマネジメントの揺るぎない信念と熱い情熱、それに戦略的な思考が必要とされます。動かない本社、動かない日本。外地で歯がゆく感じられている方もいるでしょうが、本社が動かないと何も進まないではすまされません。自らが会社の変革の為に小さい一歩でも今日踏み出す勇気が必要ではないでしょうか?世の中にはAMPEX社と同じ運命を辿った会社は枚挙にいとまがありません。
(鶴見)

Thursday 25 March 2010

盛田さんのリーダーシップ

今回はリーダーシップについての話です。私が人生で最も感銘を受けたマネジメントの一人はやはりソニーの創業者の盛田さんです。(ソニーでは上司を“さん”付けで呼んでいます。)盛田さんのマネジメントについてはこれまで本などで読まれた方も多いと思いますので私はわずかな思い出話をしたいと思います。

私は入社数年で米国に赴任になりました。当時はまだ会社も駆け出しの頃で赴任者の数も限られており私は最年少組の一人でした。盛田さんはよく米国に出張に来られその度にお会いするチャンスがありました。と言うのも私は運転の腕を見込まれて(?)空港にお迎えに上がりホテルまでお連れする役を仰せつかったからです。当時はまだ会社もリムジンなどを手配する余裕はなかったのです。ホテルに着くとせっかくだからと部屋でお茶をご馳走になりお話をする機会もありました。交わした会話は覚えていませんが、一方的な話しではなく、こちらの話もよく聞いていただいた記憶があります。

盛田さんの話し上手は有名ですが、その裏には聞き上手があります。盛田さんは何事にも興味を持たれる方で、そんなことで若手の話も聞いて頂けたのでしょうか。よく相槌も打たれ話し手を充分その気にさせる方でした。今にして思えばご本人はこうして様々な情報を吸収されたようです。「話し手は聞き手の立場に立って話すように。聞き手が納得しないのは話し手が悪い」とまで言われていました。リーダーシップとはこのように話を聞く人の身になって話すことで共感を得ることだと言えます。これは勿論聞き手の耳に心地よいことを話すことではありません。盛田さんの厳しいお話でも聞き手は納得し心を動かされ、行動に変化が起きます。

話は変わりますが、第二次大戦も終局を迎えた頃、硫黄島での戦いで指揮をとった栗林忠道中将は戦いの前に全員の将兵にこう話したと伝えられています。「もし硫黄島が陥落すればここは米軍の恰好な爆撃機の基地になり日本への空爆が一層激しくなる。そうなれば残された家族はじめ多くの人が犠牲になる。その為に我々は無駄な自決をせず最後まで戦うのだ。」実際硫黄島での戦いは壮烈をきわめ、二万人以上の日本兵が命を落としましたが、米軍もそれを上回る二万六千名以上の死傷者が出ました。栗林中将の言葉は全軍の兵士の心に響き、このような戦いになったと言われています。これは決して美化される話ではありませんが、やはりリーダーシップとはこのように聞き手の心に訴えるものがあり、それによって行動が起こされるものと言えます。会社で上司がただ命令を出しているだけではリーダーシップがあるとは言えず行動にも結びつかないでしょう。皆様のご経験はいかがでしょうか?
(鶴見)

Tuesday 16 March 2010

フットボールと電力消費のおかしな関係

今回はちょっとした小噺ですが、結構笑えます。

イギリスの電力消費は冬、特に日照時間が短い12-1月に最大となります。また1日の中で見てみると、オフィス、家庭の明かりが点きだす夕方に最大ピークを迎えます。照明が電力需要の大きなファクターになっていることが分かると思います。この点はエアコンによる夏場の電力消費が大きい日本と大きな違いです。

先日同僚のコンサルタントたちと英国の電力供給を一手に管理している民間企業であるナショナル・グリッドのコントロールセンターを見学してきました。アポロ計画のヒューストンセンターのような大きな空間と正面にあるイギリス全体の電力供給状況が一目で分かる巨大なパネルが印象的です。以前は多くの人が常時配置されていましたが、現在はコンピューター化され数人で運営されています。ご存知のように電力はガスと違ってタンクのようなものに蓄えておいて必要に応じて使用するわけにはいきません。従って需要に応じて24時間、週7日体制でNewburyにあるこのセンターで管理しているわけです。

一般的に日照時間、気温その他の要因に基づいてある程度通常の電力使用量(ベースロード)は予想することができます。英国の発電は主にガス、石炭、石油を燃料とする火力発電に頼っており、このベースロードをカバーする分の発電能力は確保されています。このコントロールセンターが殺気立つのはこのベースロードを大幅に超える瞬間的な電力消費(スパイク)が予想されるときです。係官が控えていて“モニター”を見ながら、「今だ!」という合図で普段は使わない非常用のガスタービン発電機(飛行機のジェットエンジンを想像してください)のスイッチを入れるわけです。

実は経験的にこのスパイクは事前に予想が可能です。代表的なものはイングランドチームやFAカップのファイナルといった大きなフィットボールの試合のハーフタイムです。このときには英国全土の何千万という家庭でいっせいに電気ポットのスイッチを入れる(当然ティー)、トイレに行くといった同じ行為が行われるからです。またイーストエンダーやコロネーション・ストリートといったソープ番組で大きな事件が起こったときにも同様な事態になります。つまりこのときにコントロールセンターの係官が一生懸命見ているモニターは何を隠そう、実はテレビなんです。 (西川)

Sunday 14 March 2010

システムビジネスのジレンマ

今回はメーカーのシステムビジネスについての話です。ここで言うシステムビジネスとはハードとソフトが組み合わされソリューションとして提供されるビジネスのことです。私は長らく放送局や企業向け業務用機器のシステムビジネスに携わってきました。例えば放送局のニューススタジオやテレビ中継車などが典型的なシステムビジネスです。このシステムを構成する主要な機器例えばビデオカメラやVTR,モニターなどを自社で開発しこれ等を単品で売るだけでなくシステム化して付加価値を付けることで業界でも1,2を争うトップメーカーとなりました。

自社製品がシステムに組み込まれることで事業部側の売り上げに貢献します。製品はシステム化された時に、互いに連動してうまく作動するように設計されます。これがメーカーのシステムビジネの基本モデルです。これはお客にとってもメーカーにとっても都合の良いモデルですが、ある時一部のお客からこんな声を聞きました。自分たちは特定のメーカーやその製品に囲い込まれたくない。システムの構成は他社製品で自由に代替えできるようなものを提供して欲しい、ということでした。自社にとって都合の良いモデルは必ずしもお客を満足するとは限らないということです。

社内ではこんな議論もしました。“他社製品で構成されるシステムビジネスでは利益がとれず成り立たない”“そもそも自社の製品を有しているメーカーが中立な立場でシステムビジネスをやろうとすること自体現実的なのか?”云々。これはジレンマです。利益相反型のビジネスモデルかも知れません。かつてIBMがハードを売るセールス組織から脱却してお客のベネフィットにフォーカスしたサービス会社に変身しました。我々もここまで割り切るべきなのか?いや、我々はあくまでハードを開発、設計し製品を売る中でのシステムグループだ、システムセールスを「自社製品を売るためのセールスチャンネル」の位置づけは変えずに他社製品へのアクセスも可能にしてお客のベネフィットを最大化しよう。お客を囲い込む戦略からお客のベネフィットを最大化する戦略をとろう。この二兎を追うビジネスモデルは微妙なバランスの上に現在も成り立っているようです。その後この分野にもデジタル化、IT化の波が押し寄せシステムは益々オープンなものになってきました。こんな状況下で「ハードメーカーのシステムビジネス」をどう成り立たせるのか?この問題について皆様はいかにお考えでしょうか?ご意見をお聞かせください。
(鶴見)

Sunday 7 March 2010

マネジメントX氏の知恵

今回はギリシャのマネジメントX氏についての話しです。一般的に欧州に進出した企業は国に代理店を作ったり、支店や販売会社、加えて欧州を統括する本部を設立するところも多いようです。この二重構造の故、本部(セントラル)と支店(ローカル)がいわゆるダブルレイヤーとなり、経費の増加、機能の重複などの問題に悩む企業もあります。この問題を解決するために、企業はローカルの権限を中央に集結したり販売会社を集約したりと様々な手を打ちます。このリストラクチャリングは時には中央集権化、時には地方分権化となり振り子が振れる度に欧州の人間にとってはフラストレーションの原因にもなります。

さて、こんな中で私はある国の実績に注目しました。それは小国ギリシャです。数年にわたり最高の実績をあげ社内のベストマネジメント賞の表彰も受けました。そこで、この国の責任者のX氏にその秘訣を聞いてみました。彼曰く「国の販売会社はローカルにしか出来ないこと、つまりお客とのタッチポイントであるセールスやサービスに専念する。欧州本部が責任を持つ分野には一切ローカルは関わらない。これでローカルのコストも下がるし本部/ローカルの間で仕事の重複も起こらない。」つまりダブルレイヤーで費やす余分な経費や時間は結局両者の間で仕事の分担や“つなぎ”がうまくゆかずに、協力するより反発することで自らの首を絞めている、ということなのです。

言われてみれば当然ですが、どうもこのセントラルとローカルがWin/Winの状況を作るのは容易ではないことが欧州では実感されます。ローカルで起こる問題、例えば商品の品不足は欧州本部の読み違いが理由で工場の出荷遅れとなり、一方国の売上予算未達成はローカルの販売努力不足が原因ということでお互いの非難が始まります。英語でいうpoint fingerです。実際は両者の協力関係があればうまく行くケースも多いのですが。

では”何故ギリシャのような小国のマネジメントが欧州本部とのOne Teamを作ることが出来たのでしょうか?”勿論X氏の卓越したマネジメント力があります。これからは私の個人的な推論になりますが、これに加えてギリシャのような自国にリソース(人/金/物)が無い国は他人をうまく利用してビジネスをする傾向があるようです。一方大国であるドイツなどは自前のリソースで、自らのやり方を固持しようとします。セントラルの欧州ポリシーに反対なら自分でドイツ流に変えるのです。このように、欧州では“持てる国”と“持てない国”の違いが至る所で見られます。欧州内部をうまく一つの方向へまとめ、余計な内部調整に時間と労力をつぎ込まない経営。こんな知恵を小国ギリシャのマネジメントX氏が教えてくれました。皆様のご意見をお待ちしています。
(鶴見)

Tuesday 2 March 2010

海外販売体制とグローバルマネジメント育成

今回は海外販売体制とグローバルマネジメント育成についての話です。多くの日本企業は戦後、海外市場に進出する中で当初は現地の販売代理店を活用しましたが、その後直轄の現地法人に切り替えたケースも多かったようです。欧州でも主要国に現地販売会社が設立され欧州本部も設立されました。私が最初に欧州に赴任した当時まだユーロは存在しておらず、各国の販売会社は外貨建ての商品を輸入しローカル通貨で販売をしていました。為替の変動やマージン、オペレーションの違い等で販売会社の実績にも差が生じました。しかし1999年にユーロが誕生すると域内では一物一価になり各国の価格裁量権は無くなりました。また各国に分散されていた機能もshared serviceとして集約され効率化が図られました。今後は更なる変化が予想されます。

さて以上のような海外販売体制の移り変わりはグローバルマネジメント育成にどのような変化をもたらしたでしょうか。まずは代理店時代ですが優秀な代理店にはよく商売に卓越したオーナーがいて若い頃はこんな人から商売の基本を学んだものです。商品の価格交渉などは厳しいが貴重な体験でした。代理店が自社の販売会社に変わると内内の取引となり価格体系も変わります。それでも自前のオペレーションである販売会社としてはかなりの独自性を発揮する余地がありました。販売会社経営はマネジメントトレーニングの最良の場でした。

しかしEUやEuroなどで地域内の均一化、ボーダレス化が進むにつれ国ごとに経営リソースを独自に持ち独立して経営する余地は少なくなります。例えば独自の広告宣伝も限定され欧州内で同一キャンペーンが企画されます。分散投資より集中投資が効果的という訳です。ローカルマネジメントに求められる付加価値は国内のセールス、サービスやブランド作りにシフトされます。海外販売体制の変化と共に現地マネジメントの役割も変化してきた訳です。

そこで問題です。代理店との取引から自社の販売体制に移りそして地域内の統一化が図られ更にグローバル化が進む中で有能なマネジメントをどう育てるのか、という問題です。人の能力は自由な裁量と責任と権限のある環境下でより効果的に開発されると仮定すると、今日のIT情報技術の発達、グローバル市場の変化、更なる地域の集約化が図られる中でグローバルマネジメントを今後どう育てるか一層の工夫と知恵が必要な気がします。新しい環境下では新しいチャレンジがあります。これからのグローバルマネジメントを育成する環境は一昔と大きく違ってきていると感じます。皆様のお考えをお聞かせください。
(鶴見)

Thursday 25 February 2010

親会社と子会社

今回は日本の親会社と海外の子会社の間で起こり得る問題について述べてみたいと思います。私は若い頃アメリカの子会社に赴任になりました。色々な仕事を経験しましたが、その中の一つにProcurementがあります。米国で販売する商品の買い付けをする仕事です。発注先は日本の親元の事業部で当時会社では新規に開発した大型の戦略商品がありました。この商品は3点一組のようないわばシステム商品で、各商品は単品でも売りますが、3点が同時に出荷されるのが成功の鍵でした。ところがこれが技術部や製造部にはかなりの負担のために同時出荷が困難な状況に陥りました。私は何としてでもこの商品の成功の為にと日本側をプッシュしたものです。

ところがこれを日本側の上役の方が見て、名指してお叱りを受けました。理想を言うな、技術/製造陣の苦労を考えろ、という訳です。勿論経験の乏しい私でも日本側の苦労は分かります。しかし、この大事な商品の成功の為には簡単に引き下がる訳にはゆきません。結局3点は出荷時期がずれましたが、何とかお客様のご要望に応えることが出来ました。

さて、ここで私の疑問は、この経緯が日本の一輸出企業と海外の第三者の会社であればどうだったかということです。場合によっては出荷遅れによる損害賠償や予定利益の損失クレームに発展したかも知れません。海外販売子会社の一担当者が本社事業部の苦労も分からずに無理を言うな、という理屈は分かります。しかし、これが日本の親会社、海外の子会社の甘えの構造に発展し最終的には会社の体質を弱くしないと誰が言えるでしょうか?身内でうまく調整をとることで波風を立てない、要らない社内不協和音を避ける風潮。第三者との取引ならオーダーをキャンセルされる、賠償金を取られるなどの危機意識は本社/海外子会社の親子関係の中では希薄になりがちです。

もちろん、海外子会社の強みもあります。しかし現実としては親元が海外に派遣した赴任者や現地従業員から謙虚に話しを聞くことは簡単ではありません。一方で海外赴任者も帰任後のことを心配したり、昔の上下関係を引きずるような仕事はしていないでしょうか?今回のトヨタの例を挙げるまでものなく、海外、国内を問わず市場で起こったことを対岸の火事とせず、本社と子会社が真摯に向き合うことができないと、そのツケは莫大なものとして自らに降りかかる結果となるのは明白です。皆様のご意見をお聞かせください。
(鶴見)

Wednesday 24 February 2010

ユティリティー請求書の悪夢

今日の話はビジネスだけでなく、家庭のガス・電気でも当てはまりますので覚えておくと請求書のストレス軽減に役立ちます。

今までの経験からガスや電気請求書(utility bill)には結構間違いが多いのに驚きます。いろいろ理由があるのですが、問題となる筆頭は電気やガスのメーターのEstimate Readと呼ばれるものです。請求書発行時にメーターを実際に読んでおらず、過去の消費量に基づいて計算で出てきた数値です。問題はこの数値がでたらめで過剰、あるいは過小請求となるケースです。Estimate Readが積み重なると、なぜかそのほかの間違いまでくっついてきて、どうしようもなくなるものです。通常エネルギー会社はMeter Reading Agencyという別会社にメーター読みを委託してますが、当然コストがかかります。したがって場合によっては何年もメーターを読んでいなかったということもあります。

というわけで唯一の解決法は面倒でも最低3ヶ月に1回は自分でメーターを読んでサプライヤーに報告することです。月の最終日が一番ベストでその日のうちにレポートすれば月初の請求書発行に間に合う言う理屈です。この国では特に言えることですが、サプライヤーに文句を言う前にまず自己防衛なんですね。メーターの読み方は以下のBritish Gasのリンクを参照してください。 (西川)


Saturday 20 February 2010

改革のチャンス

今回はあるローカルのトップマネジメントについての話です。Aさんはある事業部門のヘッドを勤め実績を残し昇進を重ねてついに販売会社全体のトップに昇りつめました。ところが、結果はうまく行かず2年も経たないうちに交代となってしまいました。さて今回はこのケースについて考えたいと思います。

Aさんの事業部門(仮にX事業部門とします)は売上、利益とも全体の中では主流ではありません。そして他の事業部門とはビジネスモデルにかなりの違いがありました。それは中央集権型の組織体制です。大きなポリシーは日本の本部で決定され指示され販売会社はそれを着実に実行します。一方他の事業部門ではポリシーの決定権はローカル、例えば欧州本部や国の販売会社にあります。社内ネゴに時間がかかりますが会社の設立時から長らく続いた社内ポリシーです。

この状況下でAさんは着任早々このポリシーの見直しを行いX事業部門で行われていたやり方を実行しようとしました。何かの折につけ、X事業部門ではああしていた、こうしていたと口癖のように言っていたようです。しかも彼はかなりのマイクロマネジメントで細かいことにも口を出していたようです。ある人は彼を皮肉交じりに「係長」と呼んでいたほどです。Aさんの交代の原因は、彼が昔の事業部門のビジネスモデルを押し付け、しかもマイクロマネジメントであったからでしょう。

しかし、もし彼が卓越したリーダーであれば会社は新しいビジネスモデルをその時に採用していたかも知れません。実際、社内の小さな事業部門が実行しているやり方が実は今の時代、次の時代に最もフィットしたやり方というケースはあります。逆に言えば、会社の本流出身の人は従来のモデルを踏襲する故、抜本的改革が遅れることもあります。Aさんの場合は不幸にもマイクロマネジメントで失格になりましたが、同時に会社は新しいビジネスモデルに変える良いチャンスを逃しことにもなりました。会社を変えるには会社の主流にいない人の方が実現できる場合があります。それはルールブレイクが出来るからです。但し本人にリーダーシップがあることが条件ですが。そして改革の機会を一度逃すと次のチャンスはすぐには訪れないことも肝に銘じるべきかも知れません。皆様のお考えをお聞かせください。
(鶴見)

Tuesday 16 February 2010

コスト削減: エネルギーコスト

今回はエネルギー(電気・ガス)のコストについて見てみましょう。

ご存知の通り英国は15年前からエネルギー市場を自由化しており、自由にガス、電気のサプライヤーを選ぶことができます。したがって上手な選択をすることでエネルギーコストがかなり削減できます。ただしリーテール価格はエネルギー市場の市況に左右されます。従いマーケットが高騰している時期に契約すると、どうしても高い価格にならざるをえません。08年の10月にエネルギー価格(ガス、電気ともに同じ傾向です)が近年のピークを迎えました。このときに長期契約(たとえば3年)されているケースは悲劇です。一度契約をしてしまうと、ビジネスを続けている限り期間中の解約はできません。残念ながら契約期間中、高い値段を払い続けなければなくなるわけです。現在であれば価格は大幅に下がってますので、大変な負担となります。このほかに契約期間、使用量なども価格に反映されます。また場合によってはビジネスユーザーであっても契約をしておらず、タリフレートが適応されているケースもあります。この場合は通常契約した方が有利です。

契約更新に関しては結構面倒な手続きがあって、現行サプライヤーの更新価格で自動継続契約してしまっているケースがかなりあります。有名な文句"Don't worry, you don't need to do anything ."です。価格更新時はコスト削減の一番のチャンスですので、もし何年も同じ会社と契約しているのであれば、一度コンサルタントに相談されることを勧めます。かなりの確率でコストは下がるものです。 (西川)

高木美帆選手のインタビュー

オリンピックがいよいよ開幕しました。オリンピックは参加することに意義があるとはいえ、誰でも勝ちたいのは当然です。日本選手も出発前のインタビューでは「メダルを取りたい」「成果を出したい」などとコメントしていました。その中で私が注目したのは中学3年生15歳の高木美帆選手です。彼女は「外国の選手と話をしたい」と答えました。すかさず「英語は大丈夫ですか?」と聞かれ「それはチョットまずいかも。。。」というインタビューでした。実際現地入りしてから、今大会の男子中距離で金メダル候補のシャニー・デービス選手(米国)と話す機会があったが、英会話がうまくゆかず「ヤングスケーターとかグッドラックぐらいしか分からなかった」そして「サンキューぐらいしか言えなくて。あーあ、という感じ」(日経)と報道されていました。

オリンピック初参加、最年少の高木選手にしてみればメダル云々よりはまず世界のトップ選手と話したい、そして彼らから何かを学びたいと思う気持はよく分かります。しかし私はこの高木選手の何気ない言葉が何故かとても頼もしく感じられました。今日本の若者の巣ごもり症候群が指摘されています。2008年度に 3カ月以上海外留学した高校生はピークの1992年度に比べて約3割減だそうです。企業で海外に赴任したい若者も年々減っていると聞きました。こんなことではオリンピックのメダルはおろかグローバル企業のメダルも取れません。国内で金を取っても世界の金は取れないでしょう。

以前米国に勤務していた頃、当時のソニーの盛田会長が現地に来られ日本人社員を前に「君たちは民間外交官と思って頑張って欲しい」と言われたことを覚えています。海外に赴任して現地でただ働くだけではなく言葉を理解し人を理解し国の代表と思って努力をする。アスリートでも企業の赴任者でもメダルをとることだけでなく同時に母国を代表して相互の理解や発展に尽くすということです。海外では多くの赴任者、移民の方、外交官が活躍されています。日本に対する評価を決めるのはまさにその人達次第です。高木さん、貴方の思いはきっと将来国際アスリートとして活躍する原点となります。赴任者の皆様も是非大きな志をもって海外で活躍されるよう心から応援しています。
(鶴見)

Thursday 11 February 2010

トヨタのリコール問題で想うこと

車の品質には絶対の信頼を持たれていたトヨタ車のリコール問題がショッキングなニュースとして報道されました。最新型で売上のトップにランクされしかも技術的にも最先端をゆくエコカーであったことが一層市場に動揺をもたらしました。しかもリコール決定の発表とトップの謝罪が後手に回ったことが何とも企業イメージを悪くしました。この理由は色々あるでしょうが、自分なりに日本企業に内在するある問題点を指摘したいと思います。

メーカーには設計部、製造部、品質部門、などがありこれ等の部門はそれぞれ独立しています。品質の問題が起こった時通常はそれが設計に原因があるのか、製造に問題があるのかまたは部品不良なのか等が明確に判断されます。品質部門は品質に問題があれば当然出荷を許さない権限を持っています。設計部や製造部がいかに苦労して作った製品でも検査部門が不合格と認定すれば出荷停止です。今回の場合は原因がコンピューターソフトの微妙な設定条件の問題で最終的には設計ミスと判断されましたが、品質部門は最後まで不良品と判定しなかったような印象を受けます。

さて一般的に日本企業の強みは所属を越えるチームワークと言われています。部門の壁を越えるチームワークでお互いに協力しながら問題を解決します。自分の仕事の責任範囲がクリアーに規定され、その枠内だけで働く欧米型とは違います。欧米で仕事をすると問題が起こった時に「これは自分の(部の)責任ではない。悪いのはあちらの部」というローカルの人の言い分に違和感を持たれた経験がある方も多いかと思います。確かにその人(部)の直接的な責任ではないかも知れませんが、両者が協力し合えば未然に防げた問題かもしれません。仕事の効率は別にしても日本企業では大まかなjob descriptionとチームワークのお陰で問題が未然に防がれるケースもあるように思います。

しかし他方でトヨタのケースのように、それが設計ミスかそうでないのか微妙な判定をめぐるトラブルが発生した時に責任の所在が明白になるのかが問題です。端的に言えば設計部と検査部門が“おんぶにだっこ”状態ではなかったのか?お互いに協力し合う仕事のやり方は一つ間違えると責任の所在が不明確になりアクションが遅れる可能性があるのではないか?日本企業の強みがひとつ間違えると弱みにもなるリスクがあるということです。日本型、欧米型どちらにしても完璧なシステムではありません。今回のトヨタのリコールと日本企業に内在する問題点に直接的な因果関係があるかは不明です。しかし、この機に今一度社内のシステムを点検してみませんか?皆様のお考えをお聞かせ下さい。
(鶴見)

Sunday 7 February 2010

赴任者を信用しますかーその2

前回は最初の100日を自己改革につなげる話しを書きましたが、私のある友人から上司のプレッシャーと部下の間に挟まれ立ち上げに苦労した経験談を聞きました。色々なケースがあるでしょうが、まずFirst 100 daysを意識することが大切と思います。

さて今回は「赴任者を信用しますかーその2」です。その出来ごとは私が北米勤務時代に起こりました。当時北米販売子会社のトップは業界でも有名なあるアメリカ人経営者でした。彼の下で毎月厳しいビジネスのレビューミーティングが持たれました。ある時私のグループの過剰在庫が問題となりました。販売会社の過剰在庫は大きく業績に影響します。その時のトップの発言に私は大変なショックを受けました。彼は「発注の担当者が工場出身者であることが問題だ」と言ったのです。

海外販売子会社で工場に発注する担当者が工場出身者であるケースは稀ではありません。トップの発言の意味は、工場出身者では工場の稼働率などを優先して発注が行われることがある。つまり海外販売会社の在庫状況や市場販売状況を最優先せずに発注がなされる可能性を問題としたものです。もしそうであれば、確かに問題でしょう。しかし日本からのプロの購買担当者ならそんな仕事はしません。工場側の事情を理解し、かつ販売会社の在庫や販売状況をふまえて発注するものです。少なくとも私はそう信じていました。

しかし、そこに日本の経営の落とし穴があるのかも知れません。製造と販売両者の利益を同時に満たそうとするばかりに思いきった発注減などのアクションをとるのが遅くなる場合はあり得ます。日本からの赴任者が一体どちらの利益を主体に考えるのかを今一度考える必要があるのではありませんか?現地のマネジメントから「私は赴任者を信用しません」と言われない為にも。
そして何よりも会社に大きな損失を生じさせない為にも。皆様のご意見をお聞かせください。
(鶴見)

Friday 5 February 2010

コミュニケーション能力

今日はいつもとちょっと違った話題です。

ちょっと仕事が落着いているこの時期にフィリピンのセブ島にホリデーにいってきました。ご存知の通りフィリピンは観光資源に恵まれ、世界中から多くの観光客をひきつけています。反対に500万ににも達するといわれるフィリピン人たちが海外で一生懸命働き、その送金が経済の重要な要素であることも良く知られています。また最近は海外からの直接投資として、アメリカ向けのコールセンタービジネスが非常に活発です。丁度、インドのイギリス向けコールセンターと同じ考え方です。

こういったビジネスの形態は地理的、経済的など様々な要因から成り立っていますが、私は特にフィリピンの人たちの優れたコミュニケーション能力が果たす役割が非常に強いと感じます。ご存知の通り英語はタガログ語と並んで公用語とされてますので何処でもほぼ間違いなく通じます。彼らの英語能力の高さは、それゆえにフィリピンの最も優れた資産の一つであるといっても言い過ぎではないでしょう。その上に彼らが持つ心からのホスピタリティーの精神によって、相手を理解しようとする態度がさらにコミュニケーション能力を高めています。

今回のホリデーは彼らからコミュニケーションの大切さを学んだことで、ちょっと得をした気分でした。 (西川)

Wednesday 3 February 2010

First 100 days

変革を期待されたオバマ政権や鳩山政権のFirst 100 daysの評価は予想以上に厳しいものでした。政権に着いた途端に諸問題の渦に巻き込まれました。同時に新政権のビジョンを作り、組織/人事を固め、予算も発表しました。この経験は国のトップに限らず会社や、一部門の責任者、ひょっとすると誰にでも当てはまることかも知れません。

さてそこで質問ですが、皆さんは最初の100日がどれほど重要とお考えですか?誰でも新しい仕事についた時は前任者からの引き継ぎや関係者との顔つなぎ、それにすぐに対応しなければならない諸問題に忙殺されるものです。私も過去何度も日米、日欧を往復しその度に新しいポジションに就きました。しかしその都度言わば転勤慣れをしてしまい一通りの引き継ぎ業務で終わってしまいました。仕事がそつなく継続されることが無意識に第一目標になっていたように思います。辛うじて最後の赴任の時のみFirst 100 daysを意識したようです。その仕事は欧州ビジネス全体の統括でした。当時、事業環境は今に劣らず厳しく会社のコスト構造も大きく変える必要がありました。加えて人事も大幅な刷新が必要でした。歴史がある会社ほど一層の変革が求められるのも事実のようです。100日の間に大きなチェンジを実行しました。チェンジをスタートしたということです。

今振り返ると何故あの時100日を効果的に使ったのでしょうか?答えはただ一つ。自分に危機意識があった為と思います。仕事の大きさやポジションも少しは影響があったかも知れません。しかしどんな仕事にも改革が必要です。問題は自らが危機意識を持ち変革する情熱があるか否かにあるような気がします。そして転勤や赴任が改革のチャンスであり、100日がそれを始める絶好の機会であるように思います。過去何度とチャンスを逸した自分の人生を振り返って考えてみました.皆さんはいかがでしょうか?蛇足ですが100日を過ぎてしまった方でも今日から100日の間で取り組んでみられたらいかがでしょうか?
(鶴見)

Monday 25 January 2010

コスト削減: 電話代

前回述べた項目の中で、私が真っ先に手をつけるのは通信費(固定・携帯電話、データ通信)と光熱費(電気・ガス)、いわゆる公共サービスと呼ばれるものです。今回は固定電話について見てみましょう。

光熱費もそうですが、電話のサービスについてはイギリスは15年ほど前から市場の自由化がなされています。したがって固定電話のサービスでもBTのほかに何百社にも上るサプライヤーが存在します。自由競争ですから特に固定電話に関しては世界でもかなりコストが安いのが実態です。したがって上手にサービスを購入することによりあっという間に電話代が半分になることもあるわけです。いままでお手伝いした中では年間1万ポンドかかっていた電話代を4千ポンドに削減したことがあります。またオーバーチャージを見つけて過去3年間分の超過請求4500ポンドをBTからリファンドしてもらったケースもあります。

重要なのはBTやGammaといった一次キャリアのインフラを使用し、価格が安く、サービスの優れたサプライヤーと契約することです。実際こういった会社が何社も存在しています。ただし変更以前に、現在自社の電話の通話パターン、つまり何処にどれだけかけているかを明らかにしないとベストのタリフ、サプライヤーを選ぶことができないのも事実です。またミニマム、セットアップチャージがあったり、1p以下の料金がすべて繰り上がってチャージされるケースもたくさんあります。相手にかけて話中だったのですぐに切ると普通ネット1秒です。ところが1分0.69pの料金(英国内通話のビジネスタリフ)でも必ず1p課金される理屈です。しっかりした会社は秒単位で課金されますのでこのケースでは本来0.01pのはずです(少数第4桁四捨五入)。1ヶ月10000通話していれば結構な金額になるのもお分かりでしょう。このあたりはT&Cを見ないと分かりません。

電話サービスは契約の縛りがゆるいのでサプライヤー変更は容易です。そして効果も1ヶ月ででます。現在電話代がかなり高いようであればまず第一に手をつける項目でしょう。 (西川)


お国柄による人選

昨年エイサーという台湾PCメーカーがデルを抜いて年間出荷額で世界第2位に踊り出たというニュースが報道されました。PCのように動きが早い業界では特に驚くことではありませんが、私が注目したのはCEOがイタリア人であることと売上の6割をEMEA地域、即ち欧州中東欧アフリカ地域で達成していることです。一般的に欧州を統括している会社のトップがイタリア人というのはそれほどめずらしくありません。しかし、世界を相手にしているしかも台湾系のメーカーのトップがイタリア人はめずらしいと感じました。その為か欧州地域では圧倒的なシェアーを確保しています。もしかすると欧州地域に力を入れるためにイタリア人をトップにしたのかも知れません。最近は中国やインドに皆の目が注がれ、欧州はアジアの成長の陰に隠れた存在になっていますが、市場規模も大きく欧州担当者には頑張りを期待しています。

そこで今日の話は“欧州を統括する人の国籍”についてです。私は人は国籍による能力の違いはないと信じています。但しグローバル化の世の中でも人には“お国柄”があるようです。以前の会社で私はある部門を担当していた頃の話です。ある商品の納入期日が遅れ大事なドイツのお客に謝りに行きました。相手はドイツ人ですから一通りの理論武装はして行きましたが散々油をしぼられました。こちらに非があるので当然です。関係もなにかギクシャクしたものになったことを覚えています。

同じようなケースがイタリアのお客との間に起こりました。やはり大事な商品の納期遅れです。担当した部門は業務用のシステム商品で納期遅れはお客の業務に大きな影響を及ぼします。そのイタリア人のお客も大変困った顔をしたのですが、すぐさま彼は事態を打開するために色々な 代案を出してきました。こうすれば、ああすれば、と中にはかなり現実的な提案もあり、それを基に こちらも設計部と交渉をして妥協案を見つけたものです。

このように、欧州の中でも英仏独のような大国と中小国のメンタリティーには違いがあります。それによるマネジメントスタイルにも違いが出るようです。欧州を統括するには中小国の出身者から 選ぶのも良いかも知れません。皆様のご経験はいかがでしょうか? (鶴見)

Tuesday 19 January 2010

コスト削減 80:20の法則

皆さん多分80 20 Ruleという言葉を聞いたことがあるかもしれません。80%の効果は上位20%の内容に注力することで達成できる、という意味です。間接費の削減も基本的にこの原則が当てはまります。

業種や地域によっても違いますがリストアップすべき項目はいくつかに絞られます。代表的なものは、ユティリティー(電気、ガス、水道)、通信費(固定、携帯、データ)、家賃(ビジネスレーツも含む)、消耗品(文房具、備品等)と各種ビジネスサービス(プリント、コピー、保険、クーリエ、フリート、カード決裁など)などです。それぞれの項目の過去1年のコストをリストアップして上位のものから手をつけていくわけです。

そしてまず安く購入することですぐに目に見える効果を出すことが重要です。こういった「クイック・ウィン」がないと社内の協力が得られず息切れするものです。その上で使い方を減らしていくとで勢いに乗るわけです。

次回はこの買い方についてもうちょっと考えて見ます。 (西川)

Sunday 17 January 2010

ある改革の失敗

前回は赴任者が赴任期間という区切りの中で仕事を完成させることができずに帰国、後に残された人、現地人が苦労するケースをとりあげました。この解決策の一つとして人事は赴任者の帰任を区切りの良い時期にする配慮が必要でしょう。そして何よりも、改革そのものが将来にわたり持続性のあることが大切です。しかし組織や制度が永遠でないことも明らかです。私が勤めた会社でも創業者の「朝令暮改」が有名でした。昔ある人が会社の組織表を作ったら、創業者から、そんなものはどうせすぐに変わる(変える)から必要が無いと言われたという笑い話のような伝説もあります。

さて今回は改革のあるケースについて考えてみましょう。A氏は優秀なオーストリア人で工場運営などに力を発揮してきました。彼を見込んで改革の目玉であるSupply Chain Management(SCM)の旗振りを、任せました。ご承知のとおり、SCMは販売、マーケティング、管理、工場、物流、ISシステムなど広い分野と関わりがあります。しかし残念ながら結果はうまく行きませんでした。理由はこのプロジェクトが彼には向いていなかったということです。彼は工場という自分の組織の中では大変能力を発揮してきましたが、他部門を巻き込みながら、利害の調整をしながらリーダーシップをとるタイプではなかったのです。

いかなる改革でも何よりも他部門との調整が大きなハードルです。誰でも出来るという訳ではありません。しかし、この種のプロジェクトで思わぬ能力を発揮する人がいます。そして何よりもこの経験が将来自らの貴重なアセットとなるように思えます。上の例では私がプロジェクトをよく理解せず、A氏の適応能力を的確に判断していなかったことが失敗の原因でした。皆さんのご経験ではいかがでしょうか? (鶴見)

Wednesday 13 January 2010

頭が痛い、コストを削減しなきゃいけないんだが・・・

私の専門は会社のコスト削減をお手伝いすることです。直接人件費や企業年金といった人事マターは同僚の専門家に任せるとして、それ以外の間接経費について見ていきましょう。

ご存知の通りコストの削減は収益に直結します。コスト削減分と同じだけの利益を上げるためには、かなり売り上げを伸ばさなければいけないことはお分かりだと思います。ところがいざ行動に移るにしても何処から手をつけていいか分からない、あるいはやっているつもりでもどうも効果が見えてこない、といったケースはたくさんあります。

上の図にある通りコスト、特に直接人件費や材料費といった会社のビジネスに直結するコスト以外のオーバーヘッドは様々な分野にわたります。問題はこの幅広い分野について対応できるリソースがあるか、あるいはそもそもやっている時間があるか、という問題があります。通常プライスをみて安い、高いを判断するケースが多いのですが、本当のコストはそれだけにとどまらないのが真実です。

特にスタッフがそのために割く時間は馬鹿にならないことをよく理解しておかなければいけません。上記の図にあるように、額面のプライスはその他のファクターの一部に過ぎないわけです。また契約内容をよく確認しないと隠されたフィーがたくさんあったり、長期契約になっていたり、様々な落とし穴が隠されていることもあります。残念ながら、本当にベストヴァリューであるかの判断はそう簡単ではないのです。

次回では何処から手をつけていくべきか、ということについてもう少し考えてみたいと思います。 (西川)

Saturday 9 January 2010

貴方は赴任者を信じますか?


最近は特に海外での仕事の難易度が高く赴任期間内で終わらない場合も多い。会社によって赴任期間には差があるが、平均すれば4年ほどであろうか?さて、ここでの問題は限られた赴任期間のなかで赴任者は何をどのように現地で達成できるかということだ。

決められた業務をこなすだけという人もいれば、現地で大きな改革に取り組む人もいる。自分も若い頃は会社や上司が引いてくれた線路の上を一途に走った。しかしマネジメントになればただ売上や利益を伸ばすだけでなく、根本的に組織や人事も大きく変える必要も出てくる。特に最近は市場環境や技術の大きな変化でビジネスのやり方を根本的に見直す必要が出てくるケースも多い。

数年前に欧州での改革を責任者として実行した時のことである。今から思えばやや無謀に実行したとの反省もある。しかし以前からの体制を続けることは選択肢になかった。製造、販売、サプライチェーン、バックオフィス、シェアードサービスと広きにわたる改革であった。実行プランを作り社内に諮りチェンジマネジメントのチームを作った。 兎に角まづは主要メンバーが一同この改革に賛同し、やる気を出してもらわないといけない。それに期間も限られている。

さていよいよ実行という時にある主要な現地人から直接言われたことがある。「Mr.Tsurumiはいつまで欧州でやるのか?」その言葉の意味は明白であった。これまで何人ものマネジメントが代わった。その度に組織を変え、人を変えた。どうせ貴方もそのうちに代わるだろう。その時はまた別の人が別のやり方でやる。自分たちはそんなことでもう振り回されたくない、とまでは言わなかったがこれが彼の本音であった。

私は言葉に窮したが、その時は自分を信じてこの改革を進めて欲しい、などと言った覚えがある。彼が本当に信じたかどうかは疑わしい。現地人は継続性があるが赴任者には赴任期間がある。いざとなれば本社という戻り先もある。現地人のなかには、日本からの赴任者はそのうちに帰任するから今はジッと砂に頭をいれていれば嵐は通り過ぎる、と考える人がいても不思議ではない。これでは会社を抜本的に変えることは難しい。さて、皆さんはこの問題をどう考えますか? (鶴見)

Thursday 7 January 2010

赴任者の挫折

皆さま、新年明けましておめでとうございます。 Across Associatesの鶴見道昭です。

北米、欧州と海外でのビジネス経験が長く,少しでも皆さまの参考になることがあればと, 思いつくままを書いてみました。今後とも宜しくお願いいたします。

海外で仕事をする人は様々なバックグランドを持っている人が多い。若い頃まだ入社数年で赴任する人(実は自分もそうであった)、留学を経て現地で働く人、かなりシニアになって初めて赴任する人など様々である。昔の話で恐縮だが自分の赴任当時はまだ海外赴任者の数も少なく、見るもの、聞くもの全てが新鮮であった。しかし最近の赴任者はどうもそうでもないらしい。海外の情報は日本にいてもある程度分かる。頭の中では分かっているつもりが実は現実と違ったりするととまどったり、素直に受け入れられない場合もある。企業がすでにある程度ブランドが確立されている場合など若くして赴任しても変に自尊心の高い人もいる。自社の風土を現地人に分からせる、何々ウェイを教え込むなどと力が入る人もいる。最近の赴任者は以前ほどでもないだろうが、一昔は海外赴任者はエリートといわれ、その実力を錯覚をしている人も見られた。実際、現地でやってみると思わぬ困難にぶつかり、鬱になったりするケースもある。

私が若い頃海外に赴任になった「優秀な人材」がいた。彼は将来を嘱望され日本でも上司にかわいがられ本人も意気揚々と赴任してきた。確かに頭も切れるし、日本人の仲間からは一目置かれた存在だった。しかし、現地人には色々な上司がいる。時にはいじめに近いことを平気でやる人もいる。日本本社から来ているからといって、ゴマをする現地人は少ない。フェアーな人でも容赦なく文句を言う。これに対等に意見を言い返すだけのコミュニケーション能力を持っている人は少ない。自分の意見が通らず、相手も他人の気持ちを考えて話す人ばかりではない。彼はとうとう鬱病を発祥し帰国後も治療をすることになった。

ここでのポイントは赴任者があまり情報過多になって現実をみる前に頭がコチコチになったり、エリート意識(本人は自覚しなくても)があったりで挫折する場合はどうしたら良いのだろうか?また以前ほど「赴任」がエリートコースでもなく、本人が赴任を希望しない場合もある。この日本巣ごもり傾向については別の機会に述べるとして、この赴任者の挫折を少しでも減らすことが大切である。尤も、この挫折感こそ将来の成長の糧となることも事実でいちがいにマイナスでもないだろうが。

筆者の経験では赴任当時の上司や周りの仲間から大いに助けてもらった覚えがある。赴任者の悩みは赴任者が一番よく分かる。日本にいる時以上に心が通うものだ。現地人の中にも自分のRole Modelになるような人物に会えるチャンスもある。

昔はノンビリしたところもあり、何よりも成長路線に乗って苦しくとも成果が上がった時代だ。また会社の組織もまだ未完成で様々な経験も出来た。仕事は苦しくても耐える余地はあった。最近の疎外感、先行きの不安、リストラなどの苦しみは以前より厳しい。だから赴任者の心のケアーはより重要になった。そして経験者が与えられるアドバイスはより貴重なものとなった。赴任者もまづは謙虚な気持ちで赴任生活を始めないといけない。赴任経験から得られる貴重な体験は必ず将来生きることに間違いはない。