アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Tuesday 16 March 2010

フットボールと電力消費のおかしな関係

今回はちょっとした小噺ですが、結構笑えます。

イギリスの電力消費は冬、特に日照時間が短い12-1月に最大となります。また1日の中で見てみると、オフィス、家庭の明かりが点きだす夕方に最大ピークを迎えます。照明が電力需要の大きなファクターになっていることが分かると思います。この点はエアコンによる夏場の電力消費が大きい日本と大きな違いです。

先日同僚のコンサルタントたちと英国の電力供給を一手に管理している民間企業であるナショナル・グリッドのコントロールセンターを見学してきました。アポロ計画のヒューストンセンターのような大きな空間と正面にあるイギリス全体の電力供給状況が一目で分かる巨大なパネルが印象的です。以前は多くの人が常時配置されていましたが、現在はコンピューター化され数人で運営されています。ご存知のように電力はガスと違ってタンクのようなものに蓄えておいて必要に応じて使用するわけにはいきません。従って需要に応じて24時間、週7日体制でNewburyにあるこのセンターで管理しているわけです。

一般的に日照時間、気温その他の要因に基づいてある程度通常の電力使用量(ベースロード)は予想することができます。英国の発電は主にガス、石炭、石油を燃料とする火力発電に頼っており、このベースロードをカバーする分の発電能力は確保されています。このコントロールセンターが殺気立つのはこのベースロードを大幅に超える瞬間的な電力消費(スパイク)が予想されるときです。係官が控えていて“モニター”を見ながら、「今だ!」という合図で普段は使わない非常用のガスタービン発電機(飛行機のジェットエンジンを想像してください)のスイッチを入れるわけです。

実は経験的にこのスパイクは事前に予想が可能です。代表的なものはイングランドチームやFAカップのファイナルといった大きなフィットボールの試合のハーフタイムです。このときには英国全土の何千万という家庭でいっせいに電気ポットのスイッチを入れる(当然ティー)、トイレに行くといった同じ行為が行われるからです。またイーストエンダーやコロネーション・ストリートといったソープ番組で大きな事件が起こったときにも同様な事態になります。つまりこのときにコントロールセンターの係官が一生懸命見ているモニターは何を隠そう、実はテレビなんです。 (西川)

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