アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Sunday 7 March 2010

マネジメントX氏の知恵

今回はギリシャのマネジメントX氏についての話しです。一般的に欧州に進出した企業は国に代理店を作ったり、支店や販売会社、加えて欧州を統括する本部を設立するところも多いようです。この二重構造の故、本部(セントラル)と支店(ローカル)がいわゆるダブルレイヤーとなり、経費の増加、機能の重複などの問題に悩む企業もあります。この問題を解決するために、企業はローカルの権限を中央に集結したり販売会社を集約したりと様々な手を打ちます。このリストラクチャリングは時には中央集権化、時には地方分権化となり振り子が振れる度に欧州の人間にとってはフラストレーションの原因にもなります。

さて、こんな中で私はある国の実績に注目しました。それは小国ギリシャです。数年にわたり最高の実績をあげ社内のベストマネジメント賞の表彰も受けました。そこで、この国の責任者のX氏にその秘訣を聞いてみました。彼曰く「国の販売会社はローカルにしか出来ないこと、つまりお客とのタッチポイントであるセールスやサービスに専念する。欧州本部が責任を持つ分野には一切ローカルは関わらない。これでローカルのコストも下がるし本部/ローカルの間で仕事の重複も起こらない。」つまりダブルレイヤーで費やす余分な経費や時間は結局両者の間で仕事の分担や“つなぎ”がうまくゆかずに、協力するより反発することで自らの首を絞めている、ということなのです。

言われてみれば当然ですが、どうもこのセントラルとローカルがWin/Winの状況を作るのは容易ではないことが欧州では実感されます。ローカルで起こる問題、例えば商品の品不足は欧州本部の読み違いが理由で工場の出荷遅れとなり、一方国の売上予算未達成はローカルの販売努力不足が原因ということでお互いの非難が始まります。英語でいうpoint fingerです。実際は両者の協力関係があればうまく行くケースも多いのですが。

では”何故ギリシャのような小国のマネジメントが欧州本部とのOne Teamを作ることが出来たのでしょうか?”勿論X氏の卓越したマネジメント力があります。これからは私の個人的な推論になりますが、これに加えてギリシャのような自国にリソース(人/金/物)が無い国は他人をうまく利用してビジネスをする傾向があるようです。一方大国であるドイツなどは自前のリソースで、自らのやり方を固持しようとします。セントラルの欧州ポリシーに反対なら自分でドイツ流に変えるのです。このように、欧州では“持てる国”と“持てない国”の違いが至る所で見られます。欧州内部をうまく一つの方向へまとめ、余計な内部調整に時間と労力をつぎ込まない経営。こんな知恵を小国ギリシャのマネジメントX氏が教えてくれました。皆様のご意見をお待ちしています。
(鶴見)

1 comment:

  1. 「ダブルレイヤー」の語感には「重複しているから無駄である」と云う響きを持っているようですね、しかし、重複という語感を取り除いて、仕事上の「情報の共有」と云う
    ことを考えると、レイヤーは逆に単一レイヤー程危険なものはないと思います。

     つまり、単一レイヤーは必ず「独りよがり」に繋がり、お互いに勝手な方向に行ってしまうのではないでしょうか。

     Mr.X がそれぞれの立場を独立で重視することは大切だと云っておられるようですが、その意見には大賛成ですが、それでも相手が何をして、何を考えているかの「情報の共有」は欠かせないものだと考えます。

     之はギリシャであろうとドイツであろうと同じ事ではないのでしょうか?  (邦)

    ReplyDelete