アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Sunday, 29 August 2010

「仕分け」のチャンス

英国で暮らしている日本人は住宅環境など住みやすいと感じている半面様々なサービス分野、例えば宅配便や水漏れ修理でお粗末なサービスレベルに困惑した経験は誰にもあるでしょう。こちらにヤマト宅急便があったらどんなに便利かとうらめしく思われた方も多いのでは?反面日本に帰国した時、過剰とも言えるサービスにこれは無駄?と思われた経験もおありでしょう。

先日こんな日本のニュースを聞きました。それは最近廃業になる旅館が多い中で旅館の再生を専門にしている人の話です。その人が手掛けた某旅館は部屋数が20で小さめの規模です。チェックインするお客様が受付の人から説明を受けます。「部屋には冷蔵庫もテレビもありません。寝具はお客がご自分で敷きください」そしてなんと「当旅館では食事も出ません。近所にはレストランもあるのでそこでどうぞ」という訳です。勿論お客はこれを承知で泊まりに来た人たちです。事業仕分けならぬ「サービス仕分け」で徹底したスリムダウン。常時働いている人は2名。そして一泊¥2100という超低価格を実現したということです。今では何カ月先まで予約が一杯とか。

もう一つ再生の例をご紹介します。私が欧州全社を担当していた当時7つの工場がありました。そこで工場の見直しの為、工場運営に経験豊富なある人に改革を頼みました。その人は工場の運営の合理化はやりましたが、結局大胆な仕訳は出来ませんでした。数年後、結局工場はアジアに移管するかアウトソースすることになったのです。さて問題は、それが旅館であろうが、工場であろうがドラスティックな変革を目指す場合、単なる改善ではなくゼロベースで考えられるか否かが決め手になるということです。事業や工場への思い入れがある為に徹底的な改革のチャンスを逃し、部分的な改善に終わってしまうことが多々あります。最終的には徹底した荒治療が必要になったケースも多いことを見逃すことはできません。皆さんの周りで今一度ゼロベースで思い切った「仕分け」をするチャンスがあると思いますがいかがでしょうか?
(鶴見)

Monday, 23 August 2010

小笠原諸島の花と鳥に学ぶ

皆さんは小笠原諸島を訪れたことはありますか?私は行ったことはありませんが、30の島々からなり日本本土から1000キロ離れている自然豊かな島だそうです。現在ユネスコの自然遺産登録の申請がされており来年にはその結果が出るということです。先日ニュースで、現地で自然保護をしている方の興味深い話を二つ聞きました。

一つ目は小笠原諸島が南洋に位置しているにも拘わらず、そこには他で見られる色鮮やかで派手な花は少なく、地味で白い色の花が多いという話です。その理由が面白く、小笠原諸島では花の種類が少なく「花同士の競争」がないからだそうです。諸島は誕生以来これまで大陸と地続きになったことはなく、離れ小島であったため、昔からの種のみが生存し花の種類も限られてきました。南洋によく見られるあの色鮮やかな花々は出来るだけ目立つことで蜂などに花粉を運んでもらい種の存続を図るそうです。小笠原諸島の花はこの花同士の競争がないため、目立つ必要がなく、美しい色をつくるエネルギーを使わないことで白い花が多いとか。いわば花自身の「さぼり」の結果という訳です。言われてみると、なるほどと思います。

二つ目は小笠原諸島特有のアカガシラカラスバトという鳥が外来の動物である猫に襲われるケースが多く今や絶滅の危機にさらされている話です。理由はこの鳥が木の実などの餌を地上で取るためなんと地上に巣を作り猫に襲われるとのこと。何故地上かと言えば、昔から猛禽類が唯一の天敵であった為この鳥は地上に住むようになったようですが、突然外地から人によって持ち込まれた猫が野生化し、それに襲われるようです。なんという悲運でしょうか。

さてこの二つのケースを聞いて考えさせられました。それはあたかも企業の存続を暗示しているかのようです。企業は競争にさらされれば生存の為様々な工夫を凝らします。美しい色彩で蜂をおびき出すように市場に情報を発信してお客を引きつけます。しかし競争がない時は島の花が目立たない白い花しかつけないように活動が低下します。また猫に襲われるアカガシラカラスバトのように、突然新しい競争相手が現れると対策も打てぬ間に企業は倒産の危機にもさらされます。日本国内で外部からの競争から過剰に保護されたドメスティック産業はどうでしょうか?突然世の中を変える変化が起こった時に死滅する産業。どちらも身に迫る危機感の自覚がないことが共通点でもあります。毎日100という種が死滅している自然界。これを通して我々は何を学ぶべきでしょうか?
(鶴見)

Friday, 20 August 2010

食べ物にケチをつけると・・・

私は海外に出ると必ず現地の人たちがどんなものをどうやって食べているかを観察します。テーブルマナーでもアメリカ式、イギリス式、フランス式ではかなり違います。たとえばアメリカだと切ってからナイフは置いて、右手にフォークを持ち替えて食べるのが普通です。ロンドンのレストランで一発でアメリカ人と分かっちゃう仕草の代表です。ヨーロッパ大陸の人達は料理を食べてナイフとフォークをお皿に真横に並べるとご馳走様ですが、イギリスだとナイフとフォークはまっすぐ縦に置きます。これは言葉を聞かずにイギリス人をレストランで判別するいい方法なのです。イギリスの影響が強いオーストラリアやニュージーランドではどうか知らないのですが、少なくても今まで間違った例がありません。どうも日本で45度に置く根拠がどうもはっきりしませんが、この中間なのでしょうか?

私は料理が好きなこともあって、食は文化の要素の中で最も重要なものだと思っています。芸術、文学といった分野よりもより日常生活に直結しているだけに思い入れは激しいわけです。世界中の料理の中でも民族を超えて美味しい、あるいはポピュラーな料理があります。やはりフランスや中華料理の洗練度は群を抜いていますが、反対にハンバーガーやピザの普及度合いはすごいものです。最近は寿司も仲間入りしたといえるでしょう。しかしなんといっても誰もが一番すきな料理は、今まで自分が食べて育ってきた料理なのです。これは一般的にうまい、まずいを超越した文化の源泉と考えます。納豆なんかは知らない人にとってはかなりのものだと思いますが、私なんか大好物です。

というわけで裏返しに考えると、海外でその国の料理を褒めたり、料理法を聞いたり、本当に美味しいと思って楽しく食べているとホストとの距離がぐっと近づきます。この点私はかなり食べ物の許容範囲が広いので過去に非常に得をしていると思います。また本当に楽しい時間をすごすことができました。反対にその国の料理の悪口を言うと、間違いなくその人たちはいやな思いをします。イギリス人は結構自虐的なんで自分からいう人もいますが、酔っ払って「イギリスの飯はまずい」なんて会社の同僚の前で思わず言ってしまわないように注意しましょう。 (西川)


Wednesday, 18 August 2010

日本企業再生の第一歩

日本製品の強みは高品質。こう言われて日本が急成長を遂げた時代から今世界は大きく変わろうとしています。日本製品の高度な技術と性能そして信頼性は世界の消費者を魅了しました。かつて“Made in Japan”が”安かろう、悪かろう“の代名詞であった時代は今の若者には想像も出来ないでしょう。

しかし最近、この高付加価値戦略に陰りが見え出しました。日本製品の優位性は製品によっては失われつつあります。また主力の輸出相手国は欧米に加え新興諸国が大きなウェイトを占めてきました。そこではボリュームゾーンといわれる低下価格帯商品が主流です。消費者は高機能より実用的な商品を求めています。さて日本企業に秘策はあるのか?

今回は二つの事例をご紹介します。ある時米国でそれまで長年お付き合いいただいた主要顧客が他社製品を大量に買い付けました。理由は他社製品が性能や仕様では劣っていたもののお客の使用目的には充分というものです。”Their products are good enough.”というお客のコメントは今でも忘れられません。当社製品の優秀さは分っているが、そこまで必要はないというものでした。

もう一つの事例はサービスに関するものです。その顧客は日本の大手放送局でした。ドイツ支社で取材用に使っていた当社の製品が故障をしたので当社の現地支店に修理で持ちこまれました。しかしそのスピードや対応に対してクレームがつきました。理由は日本でのサービスのレベルに比べて海外は余りにお粗末ということでした。このケースはすぐに日本人サービスマンを派遣して対処をしましたが、日本のお客様が海外でサービスを受ける時に不満が多い理由はその対応やスピードなどで見劣りするからです。日本人の要求度は現地人よりはるかに高いのが普通です。

さて、事例一では日本製品の過剰な性能、事例二は海外でのサービスに関してのクレームですが、これを通じて感じたことは両事例とも残念ながら「サプライヤーがお客の目線でビジネスをしていない」という事実です。お客の満足度は国民によって異なります。要求も違います。世界を席巻した日本企業に求められるものは、もう一度謙虚にお客様の目線でものを見ることを始めるべきかと思います。これが日本企業再生の第一歩ではないでしょうか?
(鶴見)

Thursday, 12 August 2010

これは使える! ロンドン自転車ハイヤースキーム

愛すべき我らの ロンドン市長で自転車大好きオジサンでもある、ボリス・ジョンソンの肝いりで導入されたロンドン自転車利用システム(Barclays Cycle Hire)が開始されて数週間経ちました。年間45ポンドの登録料を支払ってキーを受け取ると30分以内の利用は一日何回乗っても無料という、使い方によっては非常に便利なシステムです。特にドッキングステーションが無数にある市内(基本的にリングロード内、Congestion Zone内)に住んでいる、あるいは仕事をしている人にとってはメリットが大きいと思います。

というわけで「これこそ待ってたシステムだ」と私も早速登録。昨日からシティーにあるクライアントの訪問、買い物、ジムへと大活躍でした。当然のことながら導入のみならず、メンテナンスに大変なコストがかかるわけですが、それに比べて利用料が安いのはどうしてでしょうか?実は今回のスキームはBarclays Cycle Hireと呼ばれているだけにバークレー銀行がスポンサーになって自転車からドッキングステーションまでバークレーの名前、ロゴが全面に出てきています。地方政府であってもこれだけ民間資本とのタイアップを推進し、躊躇なく宣伝をしてもらう。ケン・リビングストンの労働党市長じゃ考えられなかったことですね。いやー、これは便利! (西川)

スキームの詳細はwww.tfl.gov.uk/BarclaysCycleHire

Wednesday, 11 August 2010

本を出版しました

「ビジネスパーソンがよく使う英熟語」を2010年7月に中経出版から出しました。

英語圏の人たちが自分達の思いを最も自然に表現するときに使う英熟語を日本人は学校で学ぶチャンスがあまりありません。英人の使うそれらの表現を聞いたとき、日本人駐在員がきょとんとしている姿を見て、これでは日本人ビジネスパーソンはたいへん「損をする」と思うようになりました。

そこでムリは承知の上で自分の長年の国際業務経験よりビジネスパーソンなら知った方がよい熟語を200選定したのがこの本です。日本から来てすぐに使うのは簡単ではありませんが、せめて意味を知っていれば、コミュニケーションがはずむと思います。

値段も税込みで945円と比較的手ごろですので、日本にご出張の際には本屋さんで見てください。なお、ロンドンでは三越内のJP-Booksに置いてあるそうです。 (安高)

ご購入は: JP-Books (英国内)アマゾン(日本)までどうぞ。

Tuesday, 10 August 2010

差別とチャンス

Wisley Golf Clubは今から20年前にRobert Trenton Jrの設計でオープンしたメンバーシップゴルフクラブです。会員数約700名、30以上の国籍の会員がいる国際的なクラブです。4年前私はここの会員になり、以来ここでのクラブライフは英国生活の大切な一部になっています。

先日このレストランで働くAlexとラウンドが終わり一杯飲む時に話すチャンスがありました。彼は中年でとても誠実で感じの良い人です。経歴を聞いてみると以前は英国の某有名なゴルフクラブで働いていたが嫌になり辞めてここに移ったとか。以前の職場で彼はメンバーからlook downされる、つまり目に見えない差別を経験したということです。英国の伝統的なクラブの中には今でもある種の差別があるようですが、こうして実際に働いた人から聞くのは初めてでした。Alexはここのゴルフクラブではそんなこともなく楽しく働けると満足そうでした。

さてここで一つの仮説を立ててみました。①日本人は人種差別をしない。②日本企業はローカルの人を能力で雇う。③従って日本企業ではretentionの率が高く優秀な人材が集まる。では実際はどうなのでしょうか?日系企業では人種差別問題は少ないでしょうがローカルと日本人、男女の間で本当に差別はないでしょうか?入社したローカルの人の能力をフルに発揮させる環境を作っているでしょうか?ここでは優秀だが差別を感じている人もいます。日本企業が肌の色、人種、性、年齢の差別なく皆がモチベーションを高くして働ける環境を作れば優秀な人が入り大いに業績に貢献してくれるチャンスもあるように思います。
英国での人種差別問題。この目に見えない問題は日本企業の発展に重大な課題とチャンスを同時に投げかけているように思います。ゴルフクラブに働く人の質と職場の環境が密接に関連していることを知り考えさせられた一件でした。蛇足ながら、Wisleyのメンバーになり会員の間での人種差別を感じたことはありません。
(鶴見)

Saturday, 7 August 2010

コミュニケーションの基本

ビジネスや家庭におけるコミュニケーションの在り方については多くの人の関心事で、この得手、不得手が成功の鍵を握っていると言っても言い過ぎではありません。さて以前にソニーの創業者の盛田さんのコミュニケーションのセンスについて書きましたが、今回は私が実際に体験したある出来事をご紹介します。

それは業務用に使われるビデオシステムをソニーが1972年に発売した時のことです。私は当時米国でこのシステムの市場導入を担当していました。その為事前に日本で研修を受けるため出張し発表会にも参加しました。そこでは盛田さんご自身がVIPのお客に直接新製品の説明をされていました。入れ替わり立ち替わり来られるお客に何度も同じ説明をされていたようでした。

米国に戻り同じようにVIPをご招待して導入会を催すことになり、私は一つの提案をしました。それはVIPへの説明をより効率的にするため何人かのお客様にまずシステムの基本的な紹介をして、その後個々のお客様をアテンドして詳細を説明するという案でした。基礎的な話は皆さんで一緒に聞いていただく方が効率的と考えたのです。ところが当日盛田さんがこられ、この案は即却下されました。このユニークな説明商品を一方的なプレゼンで理解していただける筈はない、お客様と一対一のコミュニケーションで初めてこの商品のコンセプトを分かっていただけるという理由でした。

確かに説得は相手の反応があって初めて出来るものです。今日もオフィスで、会議室で、家庭で毎日コミュニケーションが行われています。さて果たしてどれだけの人が聞き手の反応を見ながら、聞きながらコミュニケーションをしているのでしょうか?決められた時間と決められたパワーポイントで一方的な話をしても聞き手が本当に納得したか、時には逆効果もあるようですがいかがでしょうか?
(鶴見)