アクロス・アソシエイツ・コンサルタンツ

Monday 25 January 2010

コスト削減: 電話代

前回述べた項目の中で、私が真っ先に手をつけるのは通信費(固定・携帯電話、データ通信)と光熱費(電気・ガス)、いわゆる公共サービスと呼ばれるものです。今回は固定電話について見てみましょう。

光熱費もそうですが、電話のサービスについてはイギリスは15年ほど前から市場の自由化がなされています。したがって固定電話のサービスでもBTのほかに何百社にも上るサプライヤーが存在します。自由競争ですから特に固定電話に関しては世界でもかなりコストが安いのが実態です。したがって上手にサービスを購入することによりあっという間に電話代が半分になることもあるわけです。いままでお手伝いした中では年間1万ポンドかかっていた電話代を4千ポンドに削減したことがあります。またオーバーチャージを見つけて過去3年間分の超過請求4500ポンドをBTからリファンドしてもらったケースもあります。

重要なのはBTやGammaといった一次キャリアのインフラを使用し、価格が安く、サービスの優れたサプライヤーと契約することです。実際こういった会社が何社も存在しています。ただし変更以前に、現在自社の電話の通話パターン、つまり何処にどれだけかけているかを明らかにしないとベストのタリフ、サプライヤーを選ぶことができないのも事実です。またミニマム、セットアップチャージがあったり、1p以下の料金がすべて繰り上がってチャージされるケースもたくさんあります。相手にかけて話中だったのですぐに切ると普通ネット1秒です。ところが1分0.69pの料金(英国内通話のビジネスタリフ)でも必ず1p課金される理屈です。しっかりした会社は秒単位で課金されますのでこのケースでは本来0.01pのはずです(少数第4桁四捨五入)。1ヶ月10000通話していれば結構な金額になるのもお分かりでしょう。このあたりはT&Cを見ないと分かりません。

電話サービスは契約の縛りがゆるいのでサプライヤー変更は容易です。そして効果も1ヶ月ででます。現在電話代がかなり高いようであればまず第一に手をつける項目でしょう。 (西川)


お国柄による人選

昨年エイサーという台湾PCメーカーがデルを抜いて年間出荷額で世界第2位に踊り出たというニュースが報道されました。PCのように動きが早い業界では特に驚くことではありませんが、私が注目したのはCEOがイタリア人であることと売上の6割をEMEA地域、即ち欧州中東欧アフリカ地域で達成していることです。一般的に欧州を統括している会社のトップがイタリア人というのはそれほどめずらしくありません。しかし、世界を相手にしているしかも台湾系のメーカーのトップがイタリア人はめずらしいと感じました。その為か欧州地域では圧倒的なシェアーを確保しています。もしかすると欧州地域に力を入れるためにイタリア人をトップにしたのかも知れません。最近は中国やインドに皆の目が注がれ、欧州はアジアの成長の陰に隠れた存在になっていますが、市場規模も大きく欧州担当者には頑張りを期待しています。

そこで今日の話は“欧州を統括する人の国籍”についてです。私は人は国籍による能力の違いはないと信じています。但しグローバル化の世の中でも人には“お国柄”があるようです。以前の会社で私はある部門を担当していた頃の話です。ある商品の納入期日が遅れ大事なドイツのお客に謝りに行きました。相手はドイツ人ですから一通りの理論武装はして行きましたが散々油をしぼられました。こちらに非があるので当然です。関係もなにかギクシャクしたものになったことを覚えています。

同じようなケースがイタリアのお客との間に起こりました。やはり大事な商品の納期遅れです。担当した部門は業務用のシステム商品で納期遅れはお客の業務に大きな影響を及ぼします。そのイタリア人のお客も大変困った顔をしたのですが、すぐさま彼は事態を打開するために色々な 代案を出してきました。こうすれば、ああすれば、と中にはかなり現実的な提案もあり、それを基に こちらも設計部と交渉をして妥協案を見つけたものです。

このように、欧州の中でも英仏独のような大国と中小国のメンタリティーには違いがあります。それによるマネジメントスタイルにも違いが出るようです。欧州を統括するには中小国の出身者から 選ぶのも良いかも知れません。皆様のご経験はいかがでしょうか? (鶴見)

Tuesday 19 January 2010

コスト削減 80:20の法則

皆さん多分80 20 Ruleという言葉を聞いたことがあるかもしれません。80%の効果は上位20%の内容に注力することで達成できる、という意味です。間接費の削減も基本的にこの原則が当てはまります。

業種や地域によっても違いますがリストアップすべき項目はいくつかに絞られます。代表的なものは、ユティリティー(電気、ガス、水道)、通信費(固定、携帯、データ)、家賃(ビジネスレーツも含む)、消耗品(文房具、備品等)と各種ビジネスサービス(プリント、コピー、保険、クーリエ、フリート、カード決裁など)などです。それぞれの項目の過去1年のコストをリストアップして上位のものから手をつけていくわけです。

そしてまず安く購入することですぐに目に見える効果を出すことが重要です。こういった「クイック・ウィン」がないと社内の協力が得られず息切れするものです。その上で使い方を減らしていくとで勢いに乗るわけです。

次回はこの買い方についてもうちょっと考えて見ます。 (西川)

Sunday 17 January 2010

ある改革の失敗

前回は赴任者が赴任期間という区切りの中で仕事を完成させることができずに帰国、後に残された人、現地人が苦労するケースをとりあげました。この解決策の一つとして人事は赴任者の帰任を区切りの良い時期にする配慮が必要でしょう。そして何よりも、改革そのものが将来にわたり持続性のあることが大切です。しかし組織や制度が永遠でないことも明らかです。私が勤めた会社でも創業者の「朝令暮改」が有名でした。昔ある人が会社の組織表を作ったら、創業者から、そんなものはどうせすぐに変わる(変える)から必要が無いと言われたという笑い話のような伝説もあります。

さて今回は改革のあるケースについて考えてみましょう。A氏は優秀なオーストリア人で工場運営などに力を発揮してきました。彼を見込んで改革の目玉であるSupply Chain Management(SCM)の旗振りを、任せました。ご承知のとおり、SCMは販売、マーケティング、管理、工場、物流、ISシステムなど広い分野と関わりがあります。しかし残念ながら結果はうまく行きませんでした。理由はこのプロジェクトが彼には向いていなかったということです。彼は工場という自分の組織の中では大変能力を発揮してきましたが、他部門を巻き込みながら、利害の調整をしながらリーダーシップをとるタイプではなかったのです。

いかなる改革でも何よりも他部門との調整が大きなハードルです。誰でも出来るという訳ではありません。しかし、この種のプロジェクトで思わぬ能力を発揮する人がいます。そして何よりもこの経験が将来自らの貴重なアセットとなるように思えます。上の例では私がプロジェクトをよく理解せず、A氏の適応能力を的確に判断していなかったことが失敗の原因でした。皆さんのご経験ではいかがでしょうか? (鶴見)

Wednesday 13 January 2010

頭が痛い、コストを削減しなきゃいけないんだが・・・

私の専門は会社のコスト削減をお手伝いすることです。直接人件費や企業年金といった人事マターは同僚の専門家に任せるとして、それ以外の間接経費について見ていきましょう。

ご存知の通りコストの削減は収益に直結します。コスト削減分と同じだけの利益を上げるためには、かなり売り上げを伸ばさなければいけないことはお分かりだと思います。ところがいざ行動に移るにしても何処から手をつけていいか分からない、あるいはやっているつもりでもどうも効果が見えてこない、といったケースはたくさんあります。

上の図にある通りコスト、特に直接人件費や材料費といった会社のビジネスに直結するコスト以外のオーバーヘッドは様々な分野にわたります。問題はこの幅広い分野について対応できるリソースがあるか、あるいはそもそもやっている時間があるか、という問題があります。通常プライスをみて安い、高いを判断するケースが多いのですが、本当のコストはそれだけにとどまらないのが真実です。

特にスタッフがそのために割く時間は馬鹿にならないことをよく理解しておかなければいけません。上記の図にあるように、額面のプライスはその他のファクターの一部に過ぎないわけです。また契約内容をよく確認しないと隠されたフィーがたくさんあったり、長期契約になっていたり、様々な落とし穴が隠されていることもあります。残念ながら、本当にベストヴァリューであるかの判断はそう簡単ではないのです。

次回では何処から手をつけていくべきか、ということについてもう少し考えてみたいと思います。 (西川)

Saturday 9 January 2010

貴方は赴任者を信じますか?


最近は特に海外での仕事の難易度が高く赴任期間内で終わらない場合も多い。会社によって赴任期間には差があるが、平均すれば4年ほどであろうか?さて、ここでの問題は限られた赴任期間のなかで赴任者は何をどのように現地で達成できるかということだ。

決められた業務をこなすだけという人もいれば、現地で大きな改革に取り組む人もいる。自分も若い頃は会社や上司が引いてくれた線路の上を一途に走った。しかしマネジメントになればただ売上や利益を伸ばすだけでなく、根本的に組織や人事も大きく変える必要も出てくる。特に最近は市場環境や技術の大きな変化でビジネスのやり方を根本的に見直す必要が出てくるケースも多い。

数年前に欧州での改革を責任者として実行した時のことである。今から思えばやや無謀に実行したとの反省もある。しかし以前からの体制を続けることは選択肢になかった。製造、販売、サプライチェーン、バックオフィス、シェアードサービスと広きにわたる改革であった。実行プランを作り社内に諮りチェンジマネジメントのチームを作った。 兎に角まづは主要メンバーが一同この改革に賛同し、やる気を出してもらわないといけない。それに期間も限られている。

さていよいよ実行という時にある主要な現地人から直接言われたことがある。「Mr.Tsurumiはいつまで欧州でやるのか?」その言葉の意味は明白であった。これまで何人ものマネジメントが代わった。その度に組織を変え、人を変えた。どうせ貴方もそのうちに代わるだろう。その時はまた別の人が別のやり方でやる。自分たちはそんなことでもう振り回されたくない、とまでは言わなかったがこれが彼の本音であった。

私は言葉に窮したが、その時は自分を信じてこの改革を進めて欲しい、などと言った覚えがある。彼が本当に信じたかどうかは疑わしい。現地人は継続性があるが赴任者には赴任期間がある。いざとなれば本社という戻り先もある。現地人のなかには、日本からの赴任者はそのうちに帰任するから今はジッと砂に頭をいれていれば嵐は通り過ぎる、と考える人がいても不思議ではない。これでは会社を抜本的に変えることは難しい。さて、皆さんはこの問題をどう考えますか? (鶴見)

Thursday 7 January 2010

赴任者の挫折

皆さま、新年明けましておめでとうございます。 Across Associatesの鶴見道昭です。

北米、欧州と海外でのビジネス経験が長く,少しでも皆さまの参考になることがあればと, 思いつくままを書いてみました。今後とも宜しくお願いいたします。

海外で仕事をする人は様々なバックグランドを持っている人が多い。若い頃まだ入社数年で赴任する人(実は自分もそうであった)、留学を経て現地で働く人、かなりシニアになって初めて赴任する人など様々である。昔の話で恐縮だが自分の赴任当時はまだ海外赴任者の数も少なく、見るもの、聞くもの全てが新鮮であった。しかし最近の赴任者はどうもそうでもないらしい。海外の情報は日本にいてもある程度分かる。頭の中では分かっているつもりが実は現実と違ったりするととまどったり、素直に受け入れられない場合もある。企業がすでにある程度ブランドが確立されている場合など若くして赴任しても変に自尊心の高い人もいる。自社の風土を現地人に分からせる、何々ウェイを教え込むなどと力が入る人もいる。最近の赴任者は以前ほどでもないだろうが、一昔は海外赴任者はエリートといわれ、その実力を錯覚をしている人も見られた。実際、現地でやってみると思わぬ困難にぶつかり、鬱になったりするケースもある。

私が若い頃海外に赴任になった「優秀な人材」がいた。彼は将来を嘱望され日本でも上司にかわいがられ本人も意気揚々と赴任してきた。確かに頭も切れるし、日本人の仲間からは一目置かれた存在だった。しかし、現地人には色々な上司がいる。時にはいじめに近いことを平気でやる人もいる。日本本社から来ているからといって、ゴマをする現地人は少ない。フェアーな人でも容赦なく文句を言う。これに対等に意見を言い返すだけのコミュニケーション能力を持っている人は少ない。自分の意見が通らず、相手も他人の気持ちを考えて話す人ばかりではない。彼はとうとう鬱病を発祥し帰国後も治療をすることになった。

ここでのポイントは赴任者があまり情報過多になって現実をみる前に頭がコチコチになったり、エリート意識(本人は自覚しなくても)があったりで挫折する場合はどうしたら良いのだろうか?また以前ほど「赴任」がエリートコースでもなく、本人が赴任を希望しない場合もある。この日本巣ごもり傾向については別の機会に述べるとして、この赴任者の挫折を少しでも減らすことが大切である。尤も、この挫折感こそ将来の成長の糧となることも事実でいちがいにマイナスでもないだろうが。

筆者の経験では赴任当時の上司や周りの仲間から大いに助けてもらった覚えがある。赴任者の悩みは赴任者が一番よく分かる。日本にいる時以上に心が通うものだ。現地人の中にも自分のRole Modelになるような人物に会えるチャンスもある。

昔はノンビリしたところもあり、何よりも成長路線に乗って苦しくとも成果が上がった時代だ。また会社の組織もまだ未完成で様々な経験も出来た。仕事は苦しくても耐える余地はあった。最近の疎外感、先行きの不安、リストラなどの苦しみは以前より厳しい。だから赴任者の心のケアーはより重要になった。そして経験者が与えられるアドバイスはより貴重なものとなった。赴任者もまづは謙虚な気持ちで赴任生活を始めないといけない。赴任経験から得られる貴重な体験は必ず将来生きることに間違いはない。